ベース奏者バシーレ・ラオラ、カルテット+αで奏でる『Moments』
フランスに生まれ、現在はベルギーを拠点に活動する新進気鋭のベーシスト、バシーレ・ラオラ(Basile Rahola)の初のソロ名義作『Moments』。ヨーロッパ・ジャズらしい叙情性を湛えつつ、彼のこれまでの短くはない旅の中での出会いから豊富なインスピレーションを得た個性的で創造的な作品だ。
カルテットのメンバーはバシーレ・ラオラのほか、チュニジア出身ピアニストのワジディ・リアヒ(Wajdi Riahi)、ベルギー出身ドラムス奏者ピエール・ユルティ(Pierre Hurty)、そして同じくベルギーのサックス奏者ジュリアン・キュヴェリエ(Julien Cuvelier)と、バシーレが現在活動の拠点とするブリュッセルで出会ったミュージシャンで構成。ここに数曲でゲストとしてカナリア諸島出身ギタリストのオクタビオ・エルナンデス(Octavio Hernández)とイタリア出身のテナーサックス奏者クラウディオ・ジュニア・デ・ローザ(Claudio Jr. De Rosa)が参加している。
アルバムは9分半の中で様々な表情を見せる(1)「Spontaneous」で幕を開ける。ベースとサクソフォンが絡み合いながら徐々に演奏はヒートアップするが、中盤では一転しピアノのワジディ・リアヒが個性的なフレーズでアラビアの風を吹き込む。それらを煽るピエール・ユルティのドラムスも素晴らしく、このカルテットの完成度の高さに一気に引き込まれる演奏となっている。
続くもの悲しげな(2)「Ashes to Come」ではバシーレ・ラオラのバルセロナ時代の相棒であるギタリストのオクタビオ・エルナンデスが活躍。この曲に限らないが、バシーレ・ラオラも低音を支えつつ非常にメロディアスなプレイをしており、中盤でのギターとピアノの即興での絡み合いにも自発的に入り込んでゆく。
全編にわたってダイナミックかつ個性的なジャズだ。伝統的なジャズに則りつつ、アイディアに溢れる演奏で即興音楽にしか成し得ない感情の表現を見事に打ち出す。集ったメンバーは国籍も多様だが、ジャズという共通言語の上で展開される相互作用は素晴らしい。
ラストの(12)「Palamós」はバシーレ・ラオラがバルセロナ在住時代に出会ったピアニスト/作曲家マリアーノ・カマラサ(Mariano Camarasa)との共作。それ以外はすべてバシーレのオリジナル。2本のサックスがフィーチュアされた(10)「Leaving Barcelona」にはバルセロナを去る寂しさが漂うが、ブリュッセルに辿り着きこれだけの才能溢れる仲間たちと素晴らしい作品を生み出した彼の旅は、きっとこれからも続いていくのだろう。これからの活動が非常に楽しみなベーシストだ。
Basile Rahola 略歴
1994年生まれのバシーレ・ラオラは7歳の頃からフランス・モンペリエのIEFAR(European Institute for Rhythmic Arts Training) でエレクトリックベースの演奏を開始。2013年、リヨンのヴィルールバンヌにあるENM(国立音楽学校)のジャズ科に入学し、コントラバスを学び多くのセッションの経験を重ねた。
その後バルセロナで3年間を過ごし、この間にギタリストのオクタビオ・エルナンデスとのデュオEP『From』を残している。
現在はベルギーを拠点に活動。自身のカルテットやWajdi Riahi Trio、Yonatan Hes Trio、Tomas Rivera Trio などで活躍している。
Basile Rahola – double bass
Julien Cuvelier – alto saxophone
Wajdi Riahi – piano
Pierre Hurty – drums
Guests :
Octavio Hernández – guitar (2, 6)
Claudio Jr. De Rosa – tenor saxophone (3, 9, 10)