水の都ヴェネツィアをテーマにしたイーロ・ランタラ新作
ジャズとクラシックに跨って活躍し、他の追随を許さない圧倒的な超絶技巧とユーモアのセンスで知られるフィンランドの奇才ピアニスト/作曲家イーロ・ランタラ(Iiro Rantala)。ソロピアノ作『Potsdam』から1年ぶりのリリースとなる2023年新譜『Veneziana』は、多くの芸術家たちが憧憬した水の都ヴェネツィアをテーマに、かの地に生きた作曲家たちへの敬意を表し新たに書かれた楽曲群を、ベルリン・フィルハーモニーの名手たちを従えて演奏した実況録音盤だ。
演奏にはベルリン・フィルの第2ヴァイオリンの首席奏者を務める日本出身の伊藤マレーネ(Marlene Ito)ほか10名の器楽奏者が参加。収録曲はヴェネツィアにゆかりのある音楽家たちをタイトルに冠しており、イーロ・ランタラ独自の遊び心満載の視点も楽しい。彼のピアノはいつものように軽やかで流麗で、繊細なタッチは室内楽のサウンドにもぴったりとはまっている。ソロもピアノだけではなくヴァイオリンやフルートなど各奏者が取る場面もあり、オーケストラも伴奏にとどまらない美しくスリリングなアレンジが施されている。
ラストの(8)「Morte a Venezia(ヴェネツィアの死)」は映画『ベニスに死す』で象徴的に用いられたグスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860 – 1911)の「交響曲第5番」へのオマージュであろう。
Iiro Rantala 略歴
イーロ・ランタラは1970年フィンランド・ヘルシンキ生まれのピアニスト/作曲家。
ヘルシンキのシベリウス・アカデミーでジャズを、そしてマンハッタン音楽学校でクラシックを学んでいる。
1988年にピアノトリオ、トリオ・トウケアット(Trio Töykeät)を結成。2008年までの20年間で10枚ほどのアルバムをリリースし世界中で人気を博した。
その後はソロ活動や、ギタリストとヒューマンビートボクサーとの変則トリオなどユニークな活動を行なっており、現在は作品のほとんどをドイツのACTレーベルからリリースしている。近年はオーケストラとの共演も多く、直近では2020年作『Playing Gershwin』はドイツの管弦楽団ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン(DKPB)との共演作となっている。
Iiro Rantala – piano, conductor
Berlin Philharmonic :
Marlene Ito – violin
Eva Tomasi – violin
Martin Stegner – viola
Dávid Adorján – cello
Esko Laine – double bass
Jelka Weber – flute
Sofia Zamora Meseguer – oboe
Matic Kuder – clarinet
Selim Aykal – bassoon
Johannes Lamotke – horn