深い精神性で紡がれる独創的なソロピアノ。セルビア出身ボヤン・ズルフィカルパシチ『As Is』

Bojan Zulfikarpasic - As Is

セルビア出身ピアニスト、Bojan Z による美しいソロピアノ作品

セルビアを代表するピアニスト/作曲家Bojan Zことボヤン・ズルフィカルパシチ(Bojan Zulfikarpasic)によるソロ・ピアノでの新作『As Is』は、流れるような美しいピアノの技巧とバルカン半島の伝統音楽の影響を受けた独創的な演奏が楽しめる素晴らしいアルバムだ。

シンプルだが、心のこもった素直で素敵な演奏だ。収録曲はウェイン・ショーター(Wayne Shorter)による(2)「Some Place Called Where」やジミー・ロウルズ(Jimmy Rowles)による(4)「The Peacocks 」、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)の(7)「Ecaroh」などのカヴァーと、ボヤン・ズルフィカルパシチによるオリジナルがバランスよく織り交ぜられており、彼の過去作収録曲のソロピアノによる再演も。

録音はアパートの一室で行われているが、ピアノの研ぎ澄まされた一音一音は豊かに響き、彼の故郷セルビアの風景の空想を喚起させる。“ありのまま”を表すアルバムのタイトル通り、驚くほどの集中力で放たれる音は彼の精神性の解放でもある。

(1)「Rhythmonesia」

古いジャズメンのオリジナルにも新たな解釈が加えられ興味深い演奏となっているが、個人的にはやはり彼のオリジナルを推したい。
セルビアの地平へと我々を誘う(1)「Rhythmonesia」、深い精神力で7分以上にわたって情感豊かに展開される(6)「Tender」、ノスタルジックな(8)「Mare Nostrum」を挟んでのラスト(9)「Self portrait in three colors」のなんとも言えない物憂げなピアノの表情は胸にぐっと迫るものがある。演奏中にふと混ざる口笛も、まるで鳥の囀りのように美しい。

アルバム『As Is』のコンセプト・ムービー。

今作は2022年にエレーヌ・デュメス(Hélène Dumez)によって創立されたピアノの即興演奏に焦点をあてた新しいレーベルである Paradis Improvise(即興の楽園)からリリースされており、同じ場所、同じピアノ、同じエンジニアによって録音された14人のピアニストによるシリーズの一片となっている。

Bojan Zulfikarpašić プロフィール

ボヤン・ズルフィカルパシチは1968年セルビア・ベオグラード生まれ。5歳からゼムンの音楽学校「コスタ・マノイロヴィッチ」でピアノを習い始めた。10代の頃からベオグラードのバンドでジャズの演奏を始め、1989年にユーゴスラビア最優秀若手ジャズ・ミュージシャン賞を受賞。1988年にはフランスのパリに移り、以降ピアニストとして成功したキャリアを築いてきた。

旧ユーゴスラビアでの兵役中に陸軍オーケストラで演奏されていた伝統的なバルカン音楽に影響を受けており、それが彼の後のすべての作品に影響を与えている。
1993年にアルバム『Bojan Z Quartet』でデビュー。2007年作『Xenophonia』でフランスのヴィクトワール・デュ・ジャズ賞を、2013年作『Soul Shelter』で年間最優秀アルバム賞を受賞した。

Bojan Zulfikarpašić – piano

Bojan Zulfikarpasic - As Is
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