ノルウェーのピアニスト、マレン・セルバーグ『Bare Være』
傍に寄り添い、疲れた心を優しく洗ってくれるような音楽だ。
ノルウェーのピアニスト/作曲家、マレン・セルバーグ(Maren Selvaag)の2019年作『Bare Være』。
ピアノ、ダブルベース、ハーディングフェーレ(ハルダンゲル・フィドル)、そしてフォークハープという珍しい編成で、素朴な音色と洗練された演奏で心の脆い部分を直接癒す“北欧ジャズ”の絶品。
マレン・セルバーグは1988年生まれ。まだ10代の2007年にリレハンメルのジャズ・フェスティヴァル「Dølajazz」でタレント賞を獲得、2016年にピアノトリオ編成のアルバム『Close to Shore』でデビューしている。第二作目となる今作も彼女の全曲オリジナルで、静謐な作編曲ながら内なる情熱を感じさせる演奏が魅力的だ。
安定感のあるベースは太い低音で全体を堅実に支え、ハープは幻想的で夢を見るような世界観で彩り、素朴な伝統楽器のフィドルは気付けば傍にいる幸福の使者のように振る舞う。でも、主役はピアノだ。マレン・セルバーグという稀有な音楽家はそうした楽園の夢物語の中心で、誰にも邪魔されない自分だけの世界をつくる、そして共有する。
じっくりと落ち着いた時の流れに身を任せたいときに、彼女の音楽は最適な選択だ。
Maren Selvaag – piano
Helga Myhr – hardanger fiddle
Julie Rokseth – folk harp
Sigurd Hole – double bass