ビート、リズム、そしてグルーヴ。黒人音楽のルーツを探求するUK天才ドラマーのデビュー作

Yussef Dayes - Black Classical Music

ユセフ・デイズが描き出す究極のグルーヴ・ミュージック

ロンドンのジャズシーンで活躍する1993年生まれのドラマー、ユセフ・デイズ(Yussef Dayes)が待望の初リーダー作 『Black Classical Music』をリリースした。タイトルが示す通り、ジャズのルーツ、つまり黒人のクラシック音楽を探求しながら自身の音楽として昇華させる内容となっている。その中心にあるのは“ビート”であり、“リズム”であり、それらが緻密に絡み合って生まれる“グルーヴ”だ。

作品の核となるのはユセフ・デイズの“心拍を模倣した”という独特の感覚をもったドラムと、ロッコ・パラディーノ(Rocco Palladino)のベース。この二人が作り上げるグルーヴによって今作の全19曲が成立していると言って過言はない。

盟友トム・ミッシュをゲストに迎えた(4)「Rust」

ユセフ・デイズのドラミングはやはり驚異的だ。
ドラムンベースを思わせる(6)「The Light」、静かだが独特の心地よいグルーヴを生み出す(11)「Birds of Paradise」、極上のチルアウト・ミュージック(3)「Raisins Under The Sun」などなど、彼の繊細かつ大胆なドラム演奏を堪能することができる。

今作のもうひとつのテーマは“家族”かもしれない。
娘のバイア・デイズ(Bahia Dayes)の声がサンプリングされた(6)「The Light」やインターリュードとして挿入される(9)「Early Dayes」などは象徴的だ。そうしたパーソナルな部分のごく自然な表出も、初のソロ・アルバムならではということなのだろう。

(6)「The Light」には娘のバイア・デイズ(Bahia Dayes)が“ヴォーカリスト”としてフィーチュアされている。

彼は今作の公開に先立ち、自身が影響を受けた楽曲をSpotifyのプレイリスト『Yussef Dayes’ “Black Classical Music” Influences Playlist』として公開している。R&B、ヒップホップ、ジャズ、ボサノヴァなど新旧さまざまなアーティストや音楽からインスパイアされたことがよく分かる選曲だ。

ロンドンのジャズシーンを牽引するユセフ・デイズの初ソロ作には、数多くの素晴らしいゲストも参加している。
ジャマイカのレゲエ・アーティストのクロニックス(Chronixx)、ジャマイカ系米国人のマルチ奏者マセゴ(Masego)、ロンドンの女性歌手ジャミラ・バリー(Jamilah Barry)、盟友トム・ミッシュ(Tom Misch)、鍵盤奏者イライジャ・フォックス(Elijah Fox)、UKジャズを牽引するサックス奏者シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)、トランペット奏者シーラ・モーリスグレイ(Sheila Maurice-Grey)、テオン・クロス(Theon Cross)、そして黒人が大多数を占めるオーケストラ、ザ・チネケ!・オーケストラ(Chineke! Orchestra)などなど。

(7)「Pon Di Plaza」にはChronixxが参加。

隆盛を極めるロンドンのジャズシーンのひとつの道標とも言うべき、素晴らしいアルバムだ。

ロンドンの最重要ドラマー、Yussef Dayes 略歴

ユセフ・デイズは1993年にサウスロンドンで生まれた。父方はジャマイカにルーツを持つ。
父親はレゲエやジャズを愛するベース奏者で、ユセフが4歳の頃に彼にドラムセットを与えた。その頃から兄弟のアーマッド(Ahmad)、ジャマル(Jamal)、カリーム(Kareem)と一緒に演奏を楽しむようになる。

両親から音楽のキャリアを追求するならノンストップで、と命じられた彼は直ぐにドラマーとしての類稀な才能を発揮。ビリー・コブハム(Billy Cobham)のマスタークラスに2度参加するなど研鑽し、兄弟のアーマッド(トランボーン)、カリーム(ベース)、そして友人のウェイン・フランシス2世(Wayne Francis II, サックス)とバンド「ユナイテッド・ヴァイブレーションズ(United Vibrations)」を結成。『The Myth of the Golden Ratio』などのアルバムを発表し、先進的なジャズとアフロ・ビートのスタイルと高く評価された。

ユセフ・カマール(Yussef Kamaal)名義でリリースした鍵盤奏者のカマール・ウィリアムス(Kamaal Williams, 別名義:Henry Wu)との共作『Black Focus』(2016年)や、ギタリストのトム・ミッシュ(Tom Misch)との共作『What Kinda Music』はユセフ・デイズのこれまでのプロジェクトの中でも最も広く知られたものとなっている。

Yussef Dayes – drums
Charlie Stacey – piano
Venna – saxophone
Rocco Palladino – bass
Alexander Bourt – congas, percussion

Guests :
Chronixx
Masego
Jamilah Barry
Tom Misch
Elijah Fox
Shabaka Hutchings
Miles James
Sheila Maurice Grey
Nathaniel Cross
Theon Cross
Chineke! Orchestra.

関連記事

Yussef Dayes - Black Classical Music
Follow Música Terra