【特集】世界にみる音楽〜ベルリン2023

「地球の音楽」を意味する、本サイト「ムジカテーハ(Musica Terra)」。
世界の良質な音楽を皆様にご紹介しているわけであるが、果たして実際に現地ではどのような音楽が聴かれているのであろうか?

本特集の第1回はドイツ・ベルリン。
オーケストラが有名な音楽の都で実際に流れる「音」の旅をお届けしたい。

街中で流れる「音」

まず、ドイツと言えばどんなアーティストを思い浮かべるだろうか?
クラウトロックで有名なカン(CAN)、シンセポップのクラフトワーク(Kraftwerk)、もっとポップスよりではエニグマ(Enigma)あたりだろうか。ジャーマンメタル界隈ではハロウィン(Helloween)ラムシュタイン(RAMMSTEIN)など、とにかくクセの強いアーティストが多い。
そんな印象だ。

しかし、街中で流れている音楽に目を向けてみよう。
少なくとも聴こえてきたのはこのあたり。
SZATaylor SwiftJames Brown(!)
最後のJBはともかく、とにかくPOP。
本当はここはドイツではないのではないかと疑いたくなるくらいPOPだ。

さらに実際にCDショップを覗いてみると、K-Popのコーナーが一角をなしているではないか。
いよいよ、ここはドイツではないと確信しかけたその時、ランキングを見るとなんと。
テイラー・スウィフトを抑え、1位にいるのはピーター・フォックス(Peter Fox)。ドイツのレゲエ・アーティストである。


きちんとドメスティックアーティストが売れていることに感動するとともに、ここがドイツなんだと再認識。
ちなみに10位にハンス・ジマー(Hans Zimmer。『ライオンキング』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』など映画音楽作曲で有名なドイツ人アーティスト)がいるのも、なかなかにドイツらしい。

CDショップの1角に設けられたK-POPの棚
ランキングの棚では、テイラースウィフトを抑えドイツ人レゲエアーティストがトップに。


その他、5位のジャングル(Jungle。UKのダンスロックアーティスト)も特徴的で、というのもベルリンのクラブはテクノ/ハードテクノ系が多い。
さすがに現場に足を運ぶことは出来なかったが、ホテルの近くのこのBarにはDJがいて毎日テクノを流していたのが印象的だった。

そして、ドイツのCDショップで驚くのはクラシックの棚の扱いの大きさ。
バッハ、ベートーヴェンなどの肖像画とともに作品が並べられており、どことなく雰囲気は音楽室。
また、日本の楽器屋でもあまり見かけないような楽器も多数並んでおり、ベルリン出身のミシェル・ンデゲオチェロ(Michell Ndegeocello)が最新作のタイトルでも取り上げたオムニコードのようなものも見受けられた。

クラシックコーナーの気合いの入り方が日本とは違った。
カリンバだけでもこの種類。
これは楽器なのか?

なお、せっかくなので日本にはなさそうな音源をと思い、購入したのがこちら。

An dich hab ich gedacht – Wader singt Schubert / Hannes Wader

ドイツで60年代から活動しているリベラル系SSW、”ドイツのボブ・ディラン”ことハネス・ヴァーダーの97年作。

「Wader singt Schubert」ということで、全編シューベルトカヴァー。
元々のアコースティックな歌い口に加え、シューベルトのクラシックが合わさり、かなり牧歌的なアルバムに仕上がっているのが印象的。

Hannes Waderによる「Bob Dylan’s Dream」のカバー、「Nachtfahrt」。
勝手に命名したが、あながちハズレではない。

一方、ミッテというエリアの川沿いは観光地らしく、ピアノバーやオープンテラスでの演奏も連日行われ、この辺りはかなりヨーロッパな趣き。


電車の中でも演奏が突然始まったりと、やはり日本とはかなり違う感覚を街中のそこかしこで見ることができた。

電車の中で歌うナイスミドル。手前のお兄さんが微妙に乗っているのが微笑ましい。

アーティストの次世代化

今回ちょうどヨーロッパ最大の家電ショー・IFAが開催されていたこともあり、こちらも訪問。
ちょうど日曜のファミリーデーということもあり、中庭ではDJがプレイしており、やはり選曲はハウス〜テクノ中心。

オーディオカテゴリーのエリアでは、YAMAHAブースで仲良くBack2 BackするDJを発見。これまたテクノと、まさにテクノ大国ドイツ。

また、スタートアップカンファレンスには、アバターアーティスト・VNCCII(ヴィンチ)が登壇。
完全バーチャルで作り上げるMusic Videoやファンとのコミュニケーションについて語るとともに自らの楽曲を紹介。

YouTubeからビッグアーティストになったジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、tiktokで火がつきBillboard Chart2位まで上り詰めたジャック・ハーロウ(Jack Harlow)など、SNSからビッグアーティストへのルートが当たり前となった今、仮想空間から新たなアーティストが生まれても不思議ではない。そう感じることのできたステージであった。

VNCCIIの「I Came I Saw I Conquered」のMV。フォートナイトなどでお馴染みのUnreal Game Engineを使って作られている。

いかがだっただろうか?
日本で見聞きするだけでは感じることの出来ない世界のリアル。
音源だけでなくカルチャーの部分においても発信を続けるムジカテーハを、これからも是非楽しみにしていただきたい。

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