時代の寵児アナ・フランゴ・エレトリコ、ブラジルの今を的確に捉えた圧巻の3rdアルバム

Ana Frango Elétrico - Me Chama de Gato que Eu Sou Sua

”私を猫と呼んで、そうすれば私はあなたのもの”

共同プロデューサーを務めたバラ・デゼージョ(Bala Desejo)のデビュー作『SIM SIM SIM』がラテングラミー賞を射止めるなど、ここ数年のうちにブラジルを代表する音楽家/プロデューサーとなったアナ・フランゴ・エレトリコ(Ana Frango Elétrico)の4年ぶり3rdアルバム『Me Chama de Gato que Eu Sou Sua』。タイトルは“猫と呼んで、私はあなたのもの”という意味で、ジャケットには2匹のトラが描かれている。

音楽はブラジルの音楽文化の成分を多分に含んだブラジリアン・ディスコといったところだが、本質的には特定の型にはめられることに抵抗するパンク・ミュージックといえる。事実、彼女のミステリアスでいて強い精神性には多くの才能溢れるミュージシャンたちが次々と吸い寄せられてきた。彼女が若くして既にブラジルの新世代を代表するアーティストとして唯一無二のポジションを築いていることが、その何よりの証左だろう。こうした音楽にはどこか社会の潮流すら変えてしまうのではないかと思わせるほどのエネルギーがあるのだ。

(7)「Insista Em Mim」

ベースのアルベルト・コンチネンチーノ(Alberto Continentino)とドラムスのセルジオ・マシャード(Sérgio Machado)は今作のグルーヴの要。奇を衒うわけではないが随所で“おいしい”プレイを聴かせる二人の卓越したコンビネーションも際立つ。
ラストの(10)「Dr. Sabe Tudo」はルビーニョ・ジャコビーナ(Rubinho Jacobina)の曲のカヴァー。ディスコ・ミュージックを想起させるサウンドにオートチューンをかけたヴォーカルが印象深い。

全体を通して楽曲は非常にキャッチーだが、アレンジやサウンド面に陳腐さはなく、過去の音楽的資産の上に自身の個性や考察を加えて丁寧に練り上げたものという印象がある。少し斜に構えた社会観、ノンバイナリーの性自認、クィアへの同意なども含め、時代を象徴するアイコンのような作品となっている。

Ana Frango Elétrico プロフィール

アナ・フランゴ・エレトリコ(本名:Ana Faria Fainguelernt)は1997年リオデジャネイロ生まれ。6歳で音楽学校に入学しピアノを始め、10歳のときにヴィラ・ロボス音楽学校の入学試験に合格し本格的な学習を始めた。デビューアルバム『Mormaço Queima』に収録される最初の曲を作曲し始めたのは16歳の頃だという。

アナ・フランゴ・エレトリコ(Frango Elétrico = 電気鶏)という芸名はロシア由来の姓ファインゲレルント(Fainguelernt)の発音が難しいために付けられた渾名から。これは絶賛された2019年の2ndアルバム『Little Electric Chicken Heart』のタイトルの由来にもなっている。

彼女は自身の作風について、「パンクのヒントを含んだ退廃的なポップ・ロック・ボッサ 」、あるいは「ポストMPB」であると語り、「私は女性の作曲家や歌手に期待されていることに対して不遜な態度をとっている」とも語っている。このジェンダー観は今作でも一貫したテーマとして力強く表出している。

2019年サンパウロ美術批評家協会(APCA)賞・新人アーティスト受賞。

Ana Frango Elétrico – vocal (1-7, 9, 10), glockenspiel (1), Rhodes (3), synthesizers (8, 10), Maestro (4), 808 programming (8, 9)
Alberto Continentino – bass (1, 2, 3, 5, 7, 10), upright bass (4, 6), synth bass (8, 9), voice (10), voice arrangement (5)
Guilherme Lirio – guitar (1-10), pocket piano (5) whistle (5) Moog Lead (2)
Sérgio Machado – drums (1, 2, 3, 4, 6, 7, 10), Oberheim DMX (2, 4)
Thomás Jagoda – synthesizers (1, 2, 3, 9)
Lux Ferreira – electric piano (1, 9), organ (5, 7), synthesizer (1, 10)
Marcelo Costa – percussion (1, 2, 5, 7, 10)
Pablo Carvalho – percussion (8, 9)
Rodrigo Maré – percussion (8, 9)
Thomas Harres – percussion (2, 4, 5)
JOCA – voice (2)
Dora Morelenbaum – backing vocals (1, 2, 4, 5, 7, 8, 9, 10)
Calu – backing vocals (1, 2, 4, 5, 7, 8, 9, 10)
Aline Gonçalves – bass clarinet, clarinet, flute (6)
Marlon Sette – trombone (1, 2, 5, 7, 9, 10)
Diogo Gomes – trumpet (1, 2, 5, 7, 9, 10)
Gilberto Pereira – saxophone (2, 5, 7, 9, 10), flute (2, 7)
Jorge Continentino – saxophone (5, 9, 10), flute (2, 7)
Vovô Bebê – flute (8)
Carla Rincon – violin (6)
Luisa de Castro – violin (3, 7)
Thais Ferreira – cello (3, 7)
Daniel Silva – cello(3, 7)
Daniel Albuquerque – viola (3, 7)
Ivan Scheinvar – violin(3, 7)
Thiago Teixeira – violin (3, 7)
Luis Felipe Ferreira – viola (3, 7)
Tomaz Soares – violin (3, 7)

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