アマパー州出身の歌手パトリシア・バストス新譜『Voz da Taba』
ブラジル北部、アマゾン川の河口の北に位置するアマパー州出身の歌手、パトリシア・バストス(Patricia Bastos)の新譜『Voz da Taba』は、MPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)好きなら聴き逃せないアルバムだ。ダンチ・オゼッチ(Dante Ozzetti)のプロデュースのもと、ブラジル、とりわけアマゾンの豊かな自然と音楽文化に根差した素敵な楽曲がずらりと並ぶ。
(1)「Jeito Tucuju」はパトリシア・バストスと、ブラジルで最も敬愛されるアーティストのひとりカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)とのデュエット。この冒頭曲がいきなりの感動的な名曲で、密かな情熱を秘めたパーカッション・アンサンブルやストリングスのサウンドに乗せたパトリシアとカエターノの優しく慈しみが深い歌声が美しすぎる。パトリシア・バストスのこれまでの作品同様に今作のほとんどの楽曲を提供するパラー州出身の詩人ジョアンジーニョ・ゴメス(Joãozinho Gomes)の詩はアマゾン河流域の誇りを活き活きと描いている。
サンバとラテンのフィーリングが混ざったような(2)「Mão de Couro」にアフロブラジルの呪術的な(3)「Cobra Sofia」を挟み、(4)「São Benedito Bendito」にはダンチ・オゼッチの妹ナー・オゼッチ(Ná Ozzetti)にアルジラ・イー(Alzira E)、アナ・マリア・カルヴァーリョ(Ana Maria Carvalho)、ファビアーナ・コッツァ(Fabiana Cozza)とブラジルを代表する女性歌手が集結。それぞれが一節を代わる代わる歌う様子はまるで祝祭だ。
ほとんどの楽曲はこのアルバムのために書き下ろされた。そのうちのいくつかは作曲家エンリコ・ヂ・ミセリ(Enrico Di Miceli)とジョアオジーニョ・ゴメスがパトリシア・バストスとダンチ・オゼッチとともにアマパー州の北に国境を接するフランス領ギアナとスリナム共和国への旅行中に制作したものだという。
プロデューサーのダンチ・オゼッチは語る:
「このアルバムは、アマパーの原住民やこの地域に定住したアフリカ系ディアスポラの子孫とのより深い対話をもたらす。そしてカリブ海やフランス領ギアナの影響により、さらにダンサブルになっている」