ベルリンの新しいタレント、モーゼス・ユーフィー・トリオ
ドイツ・ベルリンを拠点に、その圧倒的なライヴ・パフォーマンスなどで急速に熱狂的ファンを拡大するモーゼス・ユーフィー・トリオ(Moses Yoofee Trio)が初のミニアルバム『OCEAN』をリリースした。かなりセンセーショナルな出来栄えで、必聴の作品と言って過言ではないだろう。
ライヴ・セッションで驚異的な音楽を創り上げていくトリオのメンバーは、2022年にデビュー・アルバム『Susuma』をリリースしたJembaa Grooveでも活躍していた鍵盤奏者モーゼス・ユーフィー(Moses Yoofee)、ベーシストのロマン・クローブ=バランガ(Roman Klobe-Barangă)、そしてこちらも既に2022年にソロ・デビュー作をリリース済みのドラマー、ノア・ファーブリンガー(Noah Fürbringer)という編成。
収録曲は2022年半ばにベルリンのスタジオでのセッション中に書かれ、その後迅速に録音されたもので、彼らの即発的なインスピレーションが卓越した演奏技術で見事に結実したものとなっている。個人的にまずおすすめしたいのは(3)「RICHMOND」。グルーヴの要は絶妙に揺れるグルーヴが最高に心地よいノア・ファーブリンガー。ロマン・クローブも堅実にその基盤を支え、その上でモーゼス・ユーフィーが驚くほど変幻自在に、色彩に満ちた音空間を作ってゆく。これほど高度なデザインを即興主体で組み上げていくバンドは、ほかにそう居るものではない。
(4)「MINOR ISSUES」もめちゃくちゃかっこいい。ドラムスとベースの限りなく細分化された音符が複雑に絡み合い生まれるグルーヴは美しく、リスナーを酔狂の地平に誘い込む。中盤以降ではモーゼス・ユーフィーがピアノソロを披露するが、その音遣いのセンスにも現代のジャズらしく多様な影響源と彼自身のセンスが伺える。
アルバムを通じて、彼らは伝統的なジャズだけでなく、R&Bやヒップホップ、ソウルといった音楽にも同じだけの熱量をもって接してきたことを感じさせる。おそらく彼らもまた、伝統をリスペクトしながら新しい時代のジャンルレスな音楽をつくっていくアーティストなのだろう。
物語は始まったばかりだ。ベルリンのシーンに芽生えたこの才能を覚えておかない選択肢はない。
Moses Yoofee Vester – heyboards
Roman Klobe-Barangă – bass
Noah Fürbringer – drums