ウクライナ発、洗練された情感と技巧を併せ持つ現代ジャズ新譜。ローラ・マルティ&ナターリヤ・レベジェヴァ・トリオ『Waves』

Laura Marti - Waves

ウクライナのシンガー、ローラ・マルティ新作『Waves』

ウクライナの歌手ローラ・マルティ(Laura Marti)と、ピアニストのナターリヤ・レベジェヴァ(Nataliya Lebedeva)のピアノトリオによるオリジナル曲集『Waves』がリリースされた。ラーシュ・ダニエルソンの楽曲を取り上げた前作『Africa』と同じメンバーによる演奏で、ブラジルのダニ&デボラ・グルジェル・クアルテート(Dani & Debora Gurgel Quarteto, 通称DDG4)にも通ずる軽やかなグルーヴが最高に心地よい現代的なジャズ作品となっている。

全曲、ナターリヤ・レベジェヴァの作曲、ローラ・マルティの作詞。詞はすべて英語で書かれ歌われており、全てがウクライナ語だった前作『Africa』との大きな相違点となっている。
(1)「Waves」には元e.s.t.のドラマー、マグヌス・オストロム(Magnus Öström)が特別ゲストとして参加。さらにウクライナのトランペット奏者ヤキフ・ツィウェツィンスキ(Yakiv Tsvietinskyi)も叙情を感じさせるトランペットで華を添えている。

複雑な複合変拍子の(4)「Paraguay」は非常に強い情感を持った曲だ。楽曲自体は南米パラグアイでの演奏経験のあるナターリヤ・レベジェヴァが同地で得たインスピレーションを元にしていると思われるが、ローラ・マルティによる歌詞は異国の地や見知らぬものへの憧憬とともに、自国の置かれた状況に対するやり場のない怒りや悲しみを感じさせる。

アルバムのラストを締めくくるのは(8)「Tsurumigawa」というタイトルが冠せられており、これもまた素晴らしくテクニカルなメロディーを持つ曲。東京都と神奈川県を流れる鶴見川をテーマにしていると思われるが、この曲の誕生にまつわるエピソードは残念ながら分からなかった。


今作のレコーディングセッションは、ウクライナでの戦闘勃発後の2022年9月にドイツ・ルートヴィヒスブルクのバウアースタジオ(Bauer Studios GmbH)にて、Kunstiftung NRW、Freihandelszone、Tapstep、HR Musicの支援を受けて行われた。この作品は、戦争は決して芸術を殺すことはできないという事実を力強く宣言している。

(2)「Free Fall」のライヴ演奏。編成はアルバムと異なり、ウクライナ出身サックス奏者のアンドレイ・プローゾロフ(Andrej Prozorov)とローラ、ナターリヤのトリオとなっている。

Laura Marti – vocals
Nataliya Lebedeva – piano
Yurii Natsvlishvili – double bass
Dima Lytvynenko – drums

Guests :
Magnus Öström – drums (1)
Yakiv Tsvietinskyi – trumpet (1)

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