種を蒔くため、大地を耕す。バルセロナの新進気鋭の女性デュオARAR、温かなガットギターとサックスに歌が溶け込む珠玉のデビュー・アルバム!

ARAR

バルセロナの女性デュオARARのデビュー作

スペイン・バルセロナの女性二人組ユニット、アラル(ARAR)のデビュー作『Arar』は、ガットギターとサックスを中心とした温かみのあるサウンドに、二人のコーラスが優しく溶け込むとても穏やかで素敵な作品だ。グループ名でありアルバム・タイトルでもあるararとは、カタルーニャ語で“耕す”、つまり種を蒔くために大地を掘り返し、豊かな作物が実る土壌をつくることを意味する。

ARARは1993年バルセロナ生まれの作曲家/歌手/ギタリスト/ダンサー/作家/俳優のマリーナ・トマス・アマド(Marina Tomás Amado)と、1996年ジローナ生まれの作曲家/歌手/サックス奏者/鍵盤奏者マリア・クルス・ミレット(Maria Cruz Millet)のデュオユニット。

アルバムの幕開けとなる(1)「Simulacres」はわずか1分半の小品だが、その温かなサウンドと「私たちが何をすべきかを教えてください/空が私たちに落ちてこないように」「雪崩で頭まで雪が積もることはないと教えてください/肺を開いて呼吸ができる明日が来ることを」と歌う悲痛で詩的な歌詞も含め、このアルバムが傑作であることを確信させてくれる。

(1)「Simulacres」

ボサノヴァのリズムを持つ(3)「I dius adéu」にはベーシストのアントニー・ダ・クルス(Antony da Cruz)がゲスト参加し打楽器がない中で軽やかなグルーヴを作っていく。マリア・クルスのサックス・ソロも素晴らしい。マリーナのギターと、マリアのピアノ、そして二人の声による6/8拍子の(4)「Resiliència」は器楽曲への深い造詣も感じさせる。

アルバムの前半は南米アルゼンチンやブラジルの音楽を思わせる聴きやすさを持ち穏やかだが、アルバムを聴き進めるうちに実は彼女らの音楽性はかなり多岐に富むことがわかる。
幾重にも重なる“声”に注目した(6)「Cucut」、変拍子など前衛的な楽曲構築や効果的なストリングスも印象的な(7)「Eclipsi Llunar」、フラメンコの表現も取り入れた(8)「Dai dara dai」などはいい例だ。

はっきり言って、この作品は傑作だと思う。
音楽的には古典的な要素と実験的かつ未来的な要素が半々に含まれており、なおかつ純粋に多くの人々の共感を呼ぶ情緒豊かな芸術性が込められている。ぜひ、多くの人に聴いてもらいたい作品だ。

ARAR
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