無数のインスピレーションから創られたロシアのラージ・アンサンブル。アンドレイ・クラシルニコフ『Bloody Belly Comb Jelly』

Andrew Krasilnikov - Bloody Belly Comb Jelly

サックス奏者/作編曲家アンドレイ・クラシルニコフによる15年ぶりの2nd

ロシアのサックス奏者/作編曲家アンドレイ・クラシルニコフ(Andrew Krasilnikov)が、2008年のデビュー作『Serpentine』以来15年ぶりとなる2ndアルバム『Bloody Belly Comb Jelly』をリリースした。サックス、ピアノ、ベース、ドラムスのカルテットを核とし、ラージ・アンサンブルの表現を効果的に取り入れた優れた作品だ。

詳細は本記事末尾のクレジットを参照いただきたいが、典型的なジャズ・ビッグバンドの編成とは異なる組み合わせのアンサンブルが面白い。サックスはアンドレイのみ、バンドはフルートなどの木管楽器が中心で金管はわずかだ。(7)「Svet-Besprosvet」ではマリンバの音も印象的に響き渡る。
ソロを取るのはほとんどアンドレイ・クラシルニコフや、今作でも2曲を作曲している鍵盤のアレクセイ・ベッカー(Alexey Bekker)だが、ビッグバンドは単に賑やかしではなく、丁寧なアレンジが施されており聴きどころは満載。

アルバム『Bloody Belly Comb Jelly』のEPK

7曲収録された楽曲はどれも長大で、映像的な物語性を感じさせる。ベースの独奏で始まる(3)「Ariadna’s Thread」などは特にドラマチックで、ロシアのメディア『Jazzist』は“コルトレーンの「Naima」に、ストラヴィンスキー、古代ロシアの憂鬱、そして壮大な愛が加わった”と表現し絶賛している。

タイトル曲の(2)「Bloody Belly Comb Jelly」はアンドレイが休暇中にロッククライミングや海での遊泳、地図にない未開の場所の探索に至るまで、自由で開放的な時間で得たインスピレーションから生まれたもの。休暇から仕事に戻った彼はわずか5時間でこの曲を完成させたというが、適切なタイトルを思いつくのには数週間を要したようだ。

猫(?)の声が印象的な(6)「Buratino」の実験的な遊び心も楽しい。ビッグバンドという手法を通じ、ジャズの新しい世界を構築しようとする音楽は驚きの連続だ。

(2)「Bloody Belly Comb Jelly」

アルバムは最近にサンクトペテルブルクからイスラエル・テルアビブに拠点を移した2018年創立のレーベル、Rainy Days からリリースされた。

Andrew Krasilnikov プロフィール

アンドレイ・クラシルニコフは1984年ロシア・モスクワ生まれ。ロシアと米国で長年活動をしており、これまでにデイヴ・リーブマン(Dave Liebman)、ビリー・コブハム(Billy Cobham)、テリ・リン・キャリントン(Terry Lynne Carrington)、ジョン・ファディス(Jon Faddis)などの米国ジャズシーンのレジェンドや、ロシアのジャーマン・ルキヤノフ(German Lukyanov)やアレックス・ロストキー(Alex Rostockiy)らと共演し、レコーディングを行ってきた。

Andrew Krasilnikov – soprano saxophone, c-melody saxophone
Alexey Bekker – piano, Rhodes
Nikolay Zatolochny – upright bass
Mikhail Fotchenkov – drums

Ilya Dvoretsky – flute, piccolo flute, alto flute
Anton Zaletaev – flute
Roman Sokolov – alto flute
Oleg Grymov – clarinet
Aleksandr Yazykov – clarinet
Sergey Nankin – bass clarinet, clarinet
Sergey Ponomarev – flugelhorn, trumpet
Salman Abuev – flugelhorn
Sergey Gimazetdinov – trombone
Anton Gimazetdinov – tuba, bass trombone
Lev Slepner – marimba

Andrew Krasilnikov - Bloody Belly Comb Jelly
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