ブラジル北東部音楽の雄アルセウ・ヴァレンサ、歓喜と狂乱のフレーヴォ・アルバム

Alceu Valença - Bicho Maluco Beleza - É Carnaval

アルセウ・ヴァレンサ、自身のキャリアを振り返る新作

ペルナンブーコ州の田舎町サン・ベント・ド・ウナ(São Bento do Una)で1946年に生まれ、幼い頃に家族で州都レシーフェに引っ越したアルセウ・ヴァレンサ(Alceu Valença)は、幼少期に家の前を通りレシーフェの中心部に向かうカルナヴァルのブロコをよく記憶している。彼の家の右側にはフレーヴォの巨匠ネルソン・フェレイラ(Nelson Ferreira, 1902 – 1976)がおり、左側にはペルナンブーコを代表する詩人カルロス・ペナ・フィーリョ(Carlos Pena Filho, 1929 – 1960)が住んでいた。

※ブロコ…カルナヴァル(カーニバル)に出場するそれぞれの団体、チーム。

もうすぐ80歳になる老ミュージシャンの最新作である『Bicho Maluco Beleza – É Carnaval』は、アルセウ・ヴァレンサ自身のキャリアのルーツを巡るクレイジーな旅だ。ブラジル北東部の伝統的な音楽と、ロックなどのポピュラー音楽をバランスよく融合することに成功したことで知られる彼は、今回の作品でブラスバンドを従え、祝祭感に満ちた一大カルナヴァルの幕を盛大に開けた。そのカルナヴァルの隊列にはイヴェッチ・サンガーロやマリア・ベターニア、レニーニといったブラジルを代表する音楽家たちも加わっている。

ぜひ、あなたの家の前を通り過ぎるブロコを想像しながら聴いてほしい。
盛大な歓声に迎えられる最初のブロコが演奏する(1)「Bicho Maluco Beleza」では、“アシェーの女王”ことイヴェッチ・サンガーロ(Bicho Maluco Beleza, 1972 – )がアルセウ・ヴァレンサとともに歌っている。

(1)「Bicho Maluco Beleza」のライヴ演奏(今作収録版とは別音源)

(2)「De Janeiro a Janeiro」にはアルセウと同い年のマリア・ベターニア(Maria Bethânia, 1946 – )。2人は初共演だが、抒情的な曲調にマリア・ベターニアの深みのある声がよく合う。
高速のフレーヴォ(3)「Diabo Louro」は息子のジュバ(JUBA)との共演。(4)「Bom Demais」にはレシーフェが生んだロックスター、レニーニ(Lenine, 1959 – )が参加し熱のこもった歌唱を聴かせる。

ビブラートが美しいエルバ・ハマーリョ(Elba Ramalho, 1951 – )の声を楽しめるのは(5)「Caia Por Cima de Mim」。ペルナンブーコの気鋭SSWアルメリオ(Almério)は(6)「O Homem da Meia-Noite」で登場。

(2)「De Janeiro a Janeiro」のライヴ演奏(今作収録版とは別音源)

シランダ(8)「Quem Me Deu Foi Lia / Moça Namoradeira / Janaína」をアルセウ・ヴァレンサとともに歌うのはリア・ヂ・イタマラカ(Lia de Itamaracá, 1944 – )。

ラストの(10)「Táxi Lunar」には半世紀以上の付き合いの盟友ジェラルド・アゼヴェード(Geraldo Azevedo)が参加し、最後まで賑やかに終幕を迎える。

Alceu Valença - Bicho Maluco Beleza - É Carnaval
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