カタルーニャのSSWカロリーナ・アラバウ新譜『Una Frase Imaginada』
カタルーニャのシンガーソングライター、カロリーナ・アラバウ(Carolina Alabau)の第3作目となる『Una Frase Imaginada』。プロデューサー/ギタリストのハビエル・リモン(Javier Limón)と共同作業で作り出したこの傑作は、複雑すぎる社会の中で生きていく彼女の不安が、その繊細な表現を通じて霧のように目の前に存在しているような不思議な感覚を抱かせる。エリア・バスティーダ(Elia Bastida)との2021年のデュオ作『Meraki』でも感じたが、彼女はおそろしいほどの才能を秘めたアーティストだ。
アルバムは、“絵の代わりに音楽が飾られている美術館”が想定されているという。アーティストはそれぞれの音楽で抽象的なメッセージを発し、鑑賞者は人それぞれにメッセージを受け取り、感じるなり解釈するなりする。アーティストは自身の個人的な体験からいくつものメッセージを発するが、鑑賞者もまた個人的な体験のフィルターを通してそれを自由に受け取る。カロリーナ・アラバウは「歌詞が説明する真実の脆さを、親密さから伝える方法を掘り下げたいと思った」と語る。「静寂があり、作品に触れる人々の感情のエネルギーを呼吸できる美術館のように」。
(1)「Una Frase Imaginada」や(5)「Un Rinconcito」など自作の曲もあれば、(5)「Quizás, Quizás」、(6)「Veinte Años」や(8)「Dos Gardenias」といったキューバの古い有名曲などラテンアメリカとの繋がりを感じさせるレパートリーもある。カヴァー曲はいずれも現代的なアレンジが施されており、わずかなフラメンコのエッセンスも相まって非常に美しい仕上がりだ。
サウンドは全体的に穏やかに落ち着いているように見えるが、カロリーナ・アラバウの繊細で豊かな歌の表現力は、深い愛情とともに人間が持つ情熱のもっとも深層の部分を見事に伝えてくれる。
Carolina Alabau プロフィール
カロリーナ・アラバウはスペイン・カタルーニャ州バルセロナ県ルビー出身。音楽を愛する家庭に生まれ育ち、11歳の頃から歌を学んだ。バルセロナの音楽学校でピアノとジャズを学び、米国のバークリー音楽大学で学びながら2020年に『Primera Mirada』でデビュー。2021年には同じくカタルーニャ出身のヴァイオリニスト/歌手エリア・バスティーダ(Elia Bastida)との共同名義で『Meraki』を発表している。
Carolina Alabau – vocal
Israel Suárez “Piraña” – percussion
Dany Noel – bass
Limón Jr – piano
María Rehakova – flute
Javier Limón – guitar