カタルーニャの若手女性デュオ、選曲・演奏ともに完璧に美しい大傑作

Carolina Alabau & Elia Bastida - Meraki

選曲・演奏ともに素晴らしい!スペインの若手女性デュオによる大傑作

サイモン&ガーファンクルの名曲(1)「The Sound of Silence」でのあまりに美しい3分間から、名盤であることを確信した。ヴォーカル/ピアノのカロリーナ・アラバウ(Carolina Alabau)と、ヴァイオリン/ヴォーカルのエリア・バスティーダ(Elia Bastida)の初めてのデュオ盤 『Meraki』。ヴァイオリンの静かなピチカートで始まり、カロリーナ・アバラウの歌はその意味深な歌詞の中で自由を求めてもがくように泳ぐ。エリア・バスティーダのヴァイオリンは中間部ではアルコとなり、半音階を駆使した見事な表現でもうひとつのヴォーカルのように歌い上げる。
深淵で美しい、これ以上ないくらいの名カヴァーだと思う。

(1)「The Sound of Silence」

(2)「Morenika」はイスラエルのベーシスト、アヴィシャイ・コーエンの演奏で広く知られるラディーノ(スペイン系ユダヤ人)の伝統歌。

二人の共作である(3)「Miles de Luces」(幾千もの光)、これがまた素晴らしく美しい。ブランドン・アットウェルBrandon Atwell)のヴィブラフォンに、エリア・バスティーダの恩師ジョアン・チャモロJoan Chamorro )のベースも加わり、カタルーニャらしく少し陰を帯びたヴォーカルの旋律とヴァイオリン、コーラスが重なる。カヴァー曲が多い今作の中にあっても、この楽曲の存在感は際立っている。

1931年にバルセロナで設立された左派共和党への支持を表明した詩人ペレ・クアルト(Pere Quart)の詩に、カタルーニャ独立運動の象徴的なシンガーソングライター、リュイス・リャク(Lluís Llach)が曲をつけた(4)「Corrandes d’exili」は極めて政治的な歌で、スペインが抱える複雑な情勢下で生きる彼女らの想いや強い意志の一端が垣間見える。

(4)「Corrandes d’exili」

(5)「Aquela Melodia」は再び二人のオリジナル曲。ブランドン・アットウェルによるヴィブラフォンのソロも美しいた、ブラジルとNYで活躍し、近年はスペインのアーティストとも関わりの深い打楽器奏者セルジオ・クラコウスキSergio Krakowski)のプレイも素晴らしい。

ブラジルを代表するSSWシコ・ブアルキ(Chico Buarque)の(9)「Mar e Lua」、ブラジルのファンキーおばさんタニア・マリア(Tania Maria)の代表曲(10)「Yatrata」などアルバム後半も素晴らしい演奏が目白押し。少人数で演奏される作品だが、これだけ内容の充実したアルバムはなかなかない。万人におすすめしたい絶品だ。
締め括りはジョアン・ジルベルトも愛したサンバの名曲、(13)「Pra Que Discutir Com Madame」(マダムとの喧嘩はなんのため?)というユーモアも良い。

プロフィール

ピアノ/ヴォーカルのカロリーナ・アラバウは音楽を愛する家庭に生まれ育ち、11歳の頃から歌を学んだ。バルセロナの音楽学校でピアノとジャズを学び、2020年に『Primera Mirada』でデビュー。米国のバークリー音楽大学で学びながら音楽活動を行なっているようだ(セルジオ・クラコウスキやブランドン・アットウェルの参加はバークリー繋がりなのだろう)。

ヴァイオリン/ヴォーカルのエリア・バスティーダはジョアン・チャモロ主宰の少年少女ジャズ楽団、サン・アンドレウ・ジャズバンドの出身。彼との共同名義の『The Magic Sound of the Violin』(2019年)では、クラシックで培われた確かなテクニックとジャズの即興性、スウィングの陽気さが組み合わさった楽しく美しい音楽を聴かせてくれる。

Carolina Alabau – piano, vocal
Èlia Bastida – violin, vocal
March Lopez – guitar
Brandon Atwell – vibraphone
Joan Chamorro – double bass
Sergio Krakowski – percussion

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