人気サンビスタ・ソンブリーニャ、早逝の社会派SSWゴンザギーニャへのトリビュート作

Sombrinha - Viver Gonzaguinha

ソンブリーニャ新譜はゴンザギーニャ・トリビュート

人気パゴーヂ・バンド、フンド・ヂ・キンタウ(Fundo de Quintal)の初期メンバーのひとりであり、絶大な人気を誇る歌手/作曲家/弦楽器奏者ソンブリーニャ(Sombrinha)の新譜『Viver Gonzaguinha』は、その名の通りブラジル音楽を代表するSSWゴンザギーニャ(Gonzaguinha, 1945 – 1991)への愛情溢れるトリビュート作品だ。

ゴンザギーニャ(本名:Luiz Gonzaga do Nascimento, Jr.)は、“バイアォンの王様”として知られるアコーディオン奏者/作曲家ルイス・ゴンザーガ(Luiz Gonzaga do Nascimento, 1912 – 1989)の息子としてリオデジャネイロで生まれ育った(実子ではなかったとされている。この辺の関係は複雑なので興味がある方はWikipediaを参照されたい…)。父とは不仲な時期もあったが、ゴンザギーニャもまた偉大な父と同じ音楽の道に進み、作曲した作品はガル・コスタ(Gal Costa)やエリス・ヘジーナ(Elis Regina)、シモーネ(Simone)、マリア・ベターニア(Maria Bethânia)など多くの歌手によって歌われた。ブラジルの軍事独裁政権下においては抵抗の姿勢を見せ主に知識人や労働者階級の人々から広く愛され、70年代以降のブラジル音楽のみならず社会的にも影響を与えたとされる。

リオデジャネイロ初のエスコーラ・ヂ・サンバ(サンバ学校)であるデイシャ・ファラル(Deixa Falar)のコミュニティであるモーホ・ド・サン・カルオス(Morro de São Carlos)に1959年に生まれたソンブリーニャも、その地域のほかの子どもたちと同様に早くから楽器を手に取り演奏を楽しむようになった。1978年、現在もメンバーを入れ替えながら演奏活動の続くパゴーヂの伝説的グループであるフンド・ヂ・キンタウ(Fundo de Quintal)を仲間たちとともに結成。その音楽性にはゴンザギーニャをはじめとする先人のサンビスタたちの影響が窺える。

アルバムの冒頭曲(1)「Bom Dia」にはマルチーニョ・ダ・ヴィラ(Martinho da Vila)、クリオーロ(Criolo)、エルバ・ハマーリョ(Elba Ramalho)、ゼリア・ドゥンカン(Zélia Duncan)といったブラジルを代表する歌手たちが集う。Bom dia = おはよう、という目覚めの挨拶がポジティヴなサンバに乗ってブラジルを活気づけるようだ。この歌には、苦闘の末に手に入れた自由を失うわけにはいかないという強い意志も感じられる。

ゴンザギーニャの最初のヒット曲であり、ブラジル軍事政権(1964 – 1985)下で彼のほかの多くの曲とともに検閲対象となった(12)「Comportamento geral」は重い憂いを帯びたアレンジ。「無職であることを忘れろ、すべてがうまくいっている、酒とサンバがあれば…」と歌うこの曲は、社会的な不平等と、少数の既得権益者のために多くの人々が服従するプロセスへの皮肉だ。

サンバやパゴーヂだけではなく、ブラジル北東部音楽やロック、ファンクの影響を感じさせる楽曲も。そのどれもが力強いようでいて実は繊細で、苦労人であり、不慮の交通事故により45歳の若さでこの世を去ったゴンザギーニャへの憧憬を際立たせている。

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