南米と北欧が交叉する、どこかノスタルジックな大傑作。ハファエル・ジメネス新譜

Raphael Gimenes - DINAMARCA

ハファエル・ギメネス、美しすぎる新作『DINAMARCA』

ブラジル出身、デンマーク在住の男性SSWハファエル・ジメネス(Raphael Gimenes)の2024年新譜『DINAMARCA』は、ここ数年でもっとも美しい音楽作品のひとつだ。2016年作『As Montanhas de Som』や2021年作『A Tongue Full of Suns』などリリースの度にその独創的な調和でリスナーを感嘆させてきた彼が、またしても10年に一度とも思える最高のアルバムを作り上げた。

アルバムは、あらゆる瞬間が美しく、そして尊い。ヴィオラォン(クラシックギター)やストリングス、木管・金管楽器、パーカッションの緻密な室内楽アンサンブル。ドラムのビートに頼らないそのサウンドは“ミナス新世代”最高峰の名盤であるアレシャンドリ・アンドレス(Alexandre Andres)の『Macaxeira Fields』をも想わせる。ファルセットも多用するハファエル・ジメネスの喩え難い優しさのヴォーカルは、見事なアレンジの楽器群と見事に溶け合い声と伴奏の境界を曖昧にする。

アルバムのタイトルはポルトガル語で彼が2005年以降住むデンマークのこと。楽曲群もスカンジナビアでの生活を色濃く反映しており、デンマークのみならずスウェーデンやノルウェーにもリスナーを連れてゆく。レコーディングはブラジルやアルゼンチンのミュージシャンを迎えミナスジェライスで行われており、結果としてブラジルの伝統的な音楽手法と北欧的な空気が溶け込んだ音楽となっている。

(2)「Caçador de Horizontes」のMV。映像は期限切れの8mmフィルムで撮影されている。

アルバムではインドで2年間修行を積んだ打楽器奏者ヤン・カデレイト(Jan Kadereit)が叩くタブラが多用されるが、これほどインド音楽の主張を感じさせないタブラも驚きだ。あらゆる打楽器の中でも屈指の豊かさをもつタブラの表現力が自然にサウンドに溶け込み、強い主張をしないまま南米と北欧を繋ぐ潤滑剤となり、ハファエル・ギメネスの音楽の個性を際立たせているのだ。タブラという楽器に対しても従来の価値観に囚われない新鮮なインスピレーションを与えてくれる。

アルバムにはほかにピアニストのセバスティアン・マッキ(Sebastian Macchi)、フルート奏者フラヴィア・ハラチ(Flavia Huarachi)、チェロ奏者ルーカス・アルメイダ(Lucas Almeida)、そして歌手のガビ・エチェバリア(Gaby Echevarria)、セシリア・パール(Cecilia Pahl)、クリス・フェッロ(Cris Ferro)といった多様なミュージシャンが参加。滋味に富み落ち着いた色合いの音空間を創ってゆく。

Raphael Gimenes - DINAMARCA
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