アミルトン・ヂ・オランダとC4 Trio、ラテングラミー常連の2者がコラボ!南米音楽を巡る豊かな旅

Hamilton de Holanda & C4 Trío - Tembla

Tembla / Hamilton de Holanda & C4 Trío

ブラジルのバンドリン1名手アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)と、ベネズエラのクアトロ2を中心とした弦楽器グループC4トリオ(C4 Trío)。ともに2022年のラテングラミー賞でノミネートされ、授賞式で席を共にした両者が初のコラボ作品『Tembla』をリリースした。一括りにラテン、ブラジル、そしてジャズが混ざり合ったアルバムというのは簡単だが、ここには驚くほどに豊かなカリブ海や南米、そしてスペインの音楽文化が凝縮されている。

アルバムは両者が再開する機会となった2023年の弦楽器フェスティヴァルの期間を利用し、コロンビアの首都ボゴタで2日間をかけてレコーディングされた。録音の直前にホテル・テケンダマ・ボゴタ(Hotel Tequendama Bogota)でレパートリーは話し合った末に選ばれた楽曲は、ドミニカ共和国のSSWフアン・ルイス・ゲラ(Juan Luis Guerra)の(1)「Vale la Pena」や、巨匠チック・コリアの超名曲(2)「La Fiesta」、メキシコのアルベルト・ドミンゲス(Alberto Domínguez)の(3)「Frenesí」、アントニオ・カルロス・ジョビン(Años Dourados)とシコ・ブアルキ(Chico Buarque)の(4)「Años Dourados」などなど、非常に幅広く選曲されたものとなっている。

(2)「La Fiesta」。サビの半音で上昇していくコード進行はいつ聴いても心が昂る、まさに名曲。

C4 Tríoのメンバー、ホルヘ・グレム(Jorge Glem)作曲の(6)「Manzanares」にはアミルトン・ヂ・オランダの近作ですっかり常連のゲストとなったインド出身の歌手ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)が参加。南米音楽オンパレードの中には異色のエキゾチックな歌唱を聴かせてくれる。

(7)「Corazón Partío」はスペインのSSW、アレハンドロ・サンス(Alejandro Sanz)のカヴァー。
(9)「Ojos Verdes」は1929年に書かれたキューバのボレロのスタンダードだ。

Hamilton de Holanda 略歴

バンドリン奏者アミルトン・ヂ・オランダは1976年にブラジル・リオデジャネイロの音楽一家に生まれた。読み書きよりも先に祖父から贈られたバンドリンを弾き始めたといい、6歳の頃にはプロとしてのキャリアを開始し、何百万人もの視聴者を抱える国営テレビ番組「Fantástico」にバンドリンの神童として出演。以降、ブラジルの伝統的なショーロにとどまらず、ジャズなどさまざまなジャンルの音楽の要素を貪欲に取り入れ、とりわけその超絶的な演奏技巧でたくさんのファンを楽しませ続けている。

2000年より、伝統的には8弦4コースのバンドリンを低音側に2弦を追加し10弦5コースでの演奏を始める。これはバンドリンにより深い音を与え、伝統的なジャンルから解放し、後進の奏者たちにも10弦の新しい楽器を普及させる革命的な出来事となった。

多作家としても知られている。パンデミックの2020年には1日1曲を作っていたら1年に366曲ができた。彼には常に音楽を作りたいという欲求があり、仮に今、曲を書くことをやめたとしても残りの人生はそれらの曲を録音することで埋まってしまうだろうと語る。これまでに50枚近いアルバムに録音を残しており、InstagramなどのSNSでもいつも楽しそうに音楽を発信している。

これまでにエグベルト・ジスモンチ、エルメート・パスコアール、イヴァン・リンス、ミルトン・ナシメント、ドミンギーニョスといった数えきれないほどのブラジル国内ミュージシャンは勿論のこと、ウィントン・マルサリス、チック・コリア、ジュシュア・レッドマン、チューチョ・バルデス、ンドゥドゥーゾ・マカティニといった国外のミュージシャンとも多数の共演を行なってきている。バンドリンという楽器をブラジル音楽の範囲外にも拡張した先駆者とも言えるだろう。

C4 Trío 略歴

3人のクアトロ奏者と1人のエレクトリック・ベース奏者で構成されるベネズエラのC4 Tríoは2005年にベネズエラで結成された。当初はホルヘ・グレム(Jorge Glem)、エドワルド・ラミレス(Edward Ramírez)、エクトル・モリーナ(Héctor Molina)のクアトロ奏者3人のバンドだったが、のちにベーシストが加わり4人になった。

ベネズエラのSSW、グアルベルト・イバレート(Gualberto Ibarreto)とのコラボレーション作である『Gualberto + C4』(2012年)以降、リリースする作品の多くがラテン・グラミー賞にノミネートされるなどベネズエラを代表するインスト・バンドとして活躍を続け、南北アメリカ大陸を中心にクアトロという楽器の普遍性と革新性を示し続けている。

Hamilton de Holanda – bandolim
Edward Ramírez – cuatro
Jorge Glem – cuatro
Héctor Molina – cuatro
Rodner Padilla – electric bass

Guests :
Roger Zayas – chorus (1)
Janina Rosado – chorus (1)
Quico Rizek – chorus (1)
Varijashree Venugopal – voice (6)

  1. バンドリン…ブラジルの弦楽器。通常は4コース8弦で、ヴァイオリンやマンドリンと同じように下からG-D-A-Eの5度調弦。ルーツはスペイン・ポルトガル起源のヴィエラや16世紀のリュートまで遡る。この楽器の特に有名な奏者としてはジャコー・ド・バンドリン(Jacob do Bandolim, 1918 – 1969)の存在が挙げられる。 ↩︎
  2. クアトロ…カリブ海沿岸地方、特にベネズエラやプエルトリコで広く演奏されている弦楽器。スペイン語で「4」を意味するその名前の通り4弦が基本。標準的なチューニングは下からA-D-F#-Bで、その音程間隔はウクレレやギターの高音4弦と同様。ラスゲアードなどフラメンコにも通ずるリズムカルな奏法で演奏されることが多い。 ↩︎

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