チャーリー・パーカーの“予言”を具現化する気鋭サックス奏者が示す、未来のジャズ

Logan Richardson - Sacred Garden

アルト奏者ローガン・リチャードソン新作『Sacred Garden』

米国ミズーリ州カンザスシティ出身のアルトサックス奏者、ローガン・リチャードソン(Logan Richardson)が自身のバンドBlues Peopleを率いた新作『Sacred Garden』をリリースした。アルバムはカンザスシティが生んだ偉大な巨人チャーリー・パーカー(Charlie Parker, 1920 – 1955)のインタビュー音源1がサンプリングされた(1)「Dna」で始まる。“バード”2と呼ばれたビバップの先駆者は、自分の演奏に革命的なものは何も感じなかったと告白し、ジャンルやスタイルの境界を越えるという野望ではなく、純粋に演奏したいという欲求から生まれた音楽だと語る。そして「あとおそらく25年、いや50年ほどしたら、若い人が現れて、このスタイルを取り入れて何かをするだろう」と予言する──

つづく(2)「Twenty Twenty Four」は、明らかにローガン・リチャードソンの力強い声明として機能している。シンセサイザーのイントロから耳を擘くようなサックス、2本のギターにベース、ドラムスのサウンドはヘヴィで、チャーリー・パーカーやエレクトリック・マイルスを経た現代ジャズのひとつの到達点を示す。

今作のジャンルを定義することは難しい。ジャズ・ミクスチャーというのが相応しそうだが、ヴォーカリストのトニ・サウナ(Toni Sauna)をフィーチュアしたほとんどヘヴィメタルな(3)「Black To the Point」のような曲もあれば、非常にスピリチュアルに音を重ねてゆく(10)「The Walls Speak」のような曲もある。

トニ・サウナをフィーチュアした(6)「Strangling Roots」

コンセプチュアルな今作が目指すのはチャーリー・パーカーというレジェンドとの大胆な比較、あるいは彼の後継者という高らかな宣言。
山頂に立ち、両手を広げるというジャケット・アートは彼の音楽への自信の表れ。
これは決して、伊達や粋狂ではなさそうだ。

Blues People :
Logan Richardson – alto saxophone, keyboards
Peter Schlamb – keyboard, synthesizer
Justus West – electric guitar, and vocals
Igor Osypov – electric, and acoustic guitars
DeAndre Manning – electric bass
Dominique Sanders – electric bass
Ryan Lee – drums

Guest :
Toni Sauna – vocal (3, 6)

  1. 1954年の音源。インタビュアーはポール・デスモンド(Paul Desmond, 1924 – 1977)。 ↩︎
  2. バード(Bird)…チャーリー・パーカーの渾名。親しみを込めて呼ばれた彼の異名は、イギリスのロックバンド「ヤードバーズ」やニューヨークにある老舗ジャズクラブ「バードランド」の由来にもなっている。 ↩︎

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