80歳を超えた巨匠ケニー・バロンの優しいジャズが、疲れた夜を救ってくれた

Kenny Barron - Beyond This Place

ケニー・バロンのピアノが心に沁みる

イマニュエル・ウィルキンス(Immanuel Wilkins)が吹くアルトサックスの音色で、全ての疲れが身体から抜けていく感じがした。冒頭の有名なスタンダード(1)「The Nearness of You」、これほど水分のように沁みるジャズは久々だ。
無理でもしないと生きてはいけないと思い込んでいたが、立ち止まることも必要だということを思い出させてくれるような温かさがあった。

(1)「The Nearness of You」

米国の巨匠ピアニスト、ケニー・バロン(Kenny Barron)による新作『Beyond This Place』は、今の僕にとって、とても良かった。

今作には長年のレギュラートリオであるベースの北川潔(Kiyoshi Kitagawa)とドラムスのジョナサン・ブレイク(Jonathan Blake)に加え、ヴィブラフォン奏者スティーヴ・ネルソン(Steve Nelson)と前述のイマニュエル・ウィルキンスが参加している。最年長のケニー・バロン(1943年生まれ)から最年少のイマニュエル(1997年生まれ)まで幅広い世代が集い、一緒に音を奏でる、ジャズと呼ばれる音楽の素晴らしいところが凝縮されたような本当に素敵な作品だ。

収録曲もスタンダードとオリジナルをバランスよく交えた、いっさい尖った部分がない選曲(これは皮肉ではなく賞賛)。

ケニー・バロンはジャズのレジェンドだが、そのピアノに派手さはなく、カリスマ然としたところはほとんど感じられない。こういう音楽を良いと思えるのは、疲れているからなのだろうか。

(7)「Softly As in a Morning Sunrise」

Kenny Barron – piano
Immanuel Wilkins – alto saxophone
Jonathan Blake – drums
Kiyoshi Kitagawa – double bass
Steve Nelson – vibraphone

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