新世代のマルチ奏者モーガン・ゲリン、内なる孤独を才気迸るジャズに昇華した新譜

Morgan Guerin - Tales of the Facade

マルチ奏者モーガン・ゲリン新譜『Tales of the Facade』

米国のマルチ奏者/作曲家モーガン・ゲリン(Morgan Guerin)がほぼすべての楽器を演奏し作り上げた新作『Tales of the Facade』は、エレクトリック・ジャズ、R&B、ソウル、ヒップホップといった多様な音楽性を内包する新世代のマルチ奏者の才能が詰め込まれたアーティスティックな作品だ。

幼少時からドラムスやサックス、ベース、ピアノをマスターしてきた天性の才能が溢れ出るジャズの生演奏と、実験的なエレクトロニック・サウンドのバランスも最高だ。静かでスピリチュアルな幕開けである(1)「Retopia」に続き、宇宙的サウンドの(2)「Delayed Green」、どこか内省的な(3)「Silhouette」とこの前半部分だけでも既に傑作と確信に至るが、複数のサクソフォンによる実験的なハーモニーが印象的な(4)「Pyramid」、ソウルフルな(5)「We Are More」、ヒップホップの影響の色濃い(6)「Peace of Mind」とアルバムが進むにつれて、これは凄まじい作品だと圧倒されることになる。

(3)「Silhouette」

(6)「Peace of Mind」について「この曲は4年間、私たちが経験してきた困難な時期を扱っている」と語る。「私には率直でありながら同時に弱さも見せるような何かが必要でした。それは誰かに助けを求める行為であり、かつての私にとってはとても難しいことだった。この曲はそれを反映しているんだ。私たちは人生を一人で歩むようにはできていない。自分は違うと思えば思うほど、場合によっては私たちはより似通っているのかもしれない」

(6)「Peace of Mind」

Morgan Guerin 略歴

モーガン・ゲリンは1998年米国ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。母がピアニスト、父がベーシストという音楽家の家庭で育ち、生後6か月で初めてのドラムスティックを与えられ、その後すぐにドラムセットを与えられ、6歳で初めてサックスを手にした。

2014年からボストンのバークリー音楽大学で学び、2015年にはモントレー・ジャズ・フェスティヴァルにも出演。2016年にニューヨークに移り、ニュースクール・オブ・コンテンポラリー・ミュージックで学びながら『The Saga』(2016年)をリリース。さらに『The Saga Ⅱ』(2017年)、『The Saga Ⅲ』(2020年)と三部作をリリースし大きな注目を集めた。

これまでにマルチ奏者としてエスペランサ・スポルディング(Esperanza Spalding)、テリ・リン・キャリントン(Terri Lyne Carrington)、カッサ・オーバーオール(Kassa Overall)といった現行ジャズシーンの第一人者たちとも共演を重ねている。

ライヴ全編の動画。モーガン・ゲリンはサックス、ベース、電子ドラム、ウインドシンセなど様々な楽器を持ち替えて演奏している

Morgan Guerin – electric bass, upright bass, bass clarinet, drums, Fender Rhodes, flute, Mellotron, organ, percussion, piano, alto saxophone, soprano saxophone, tenor saxophone, synthesizer, vocals, Wurlitzer

JK Kim – drumsKofi Hunter – percussion
Matthew Stevens – guitar
Mike King – Fender Rhodes, organ, piano
Milena Casado – trumpet, vocals
Samantha Feliciano – harp
Simon Moullier – synthesizer, vibraphone
Alexandria Dewalt – vocals
Alexis Lombre – vocals
Chase Bradley Guerin – spoken word, vocals
Cisco Swank – vocals
Debo Ray – vocals
J. Hoard – vocals
Taraneh Mousavi – vocals
Zacchae’us Paul – vocals

Morgan Guerin - Tales of the Facade
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