ブラジリアン・ロック新世代の Chico Chico、北東部音楽との融合が魅力の新譜『Estopim』

Chico Chico - Estopim

ブラジル新世代SSWシコ・シコ新作『Estopim』

ブラジルのシンガーソングライター、シコ・シコ(Chico Chico)がロックやMPB、そしてブラジル北東部音楽などにインスパイアされた新作『Estopim』をリリースした。ソロ名義では2021年の『Pomares』以来となる第二作目で、都会的な洗練と、田舎風の素朴さを併せ持った彼らしい素直な音楽が楽しめる作品に仕上がっている。

(2)「Toada」

とにかく、ブラジルらしいロックだ。ギターがサウンドの中心になっているが、同じくらいの比重でパーカッションや伝統的な横笛の音が楽曲の重要な位置を占めている。楽曲はシコ・シコ自身のオリジナルのほか、友人のトゥイ・ラナ(Tui Lana)による作曲も3曲。リズムは多様で、特にブラジル北東部の伝統的な音楽にルーツを持つものが多い。この分野のレジェンド的存在のレニーニ(Lenine)を想起させる瞬間も。

(3)「Terra à Vista」

(6)「Altiva」にはブラジル北東部出身のSSW、ジュリアナ・リニャレス(Juliana Linhares)が参加。つづく(7)「Urmininu」では新進気鋭のヴォーカリスト、ジュリア・ヴァルガス(Julia Vargas)がフィーチュアされている。

なぜかアラビックな(8)「Acorda Zé」、フレーヴォを大胆に取り入れた疾走感のある(9)「Jogo de Chapéu」と、アルバム後半にも良曲が揃う。気がつけば11曲23分間は、あっという間だ。

Chico Chico 略歴

シコ・シコことフランシスコ・エレール(Francisco Eller)は1993年リオデジャネイロ生まれ。

母はブラジルを代表する著名なロック歌手/作曲家カッシア・エレール(Cássia Eller, 1962 – 2001)、父はカッシアのバンドのベーシストであったタビーニョ・フィアーリョ(Tavinho Fialho, 1960 – 1993)で、フランシスコという名前はミルトン・ナシメントの同名曲からとってつけられたという。なお、父はフランシスコが生まれる1週間前に交通事故で亡くなっている。
フランシスコは母カッシアと、彼女のパートナーの女性歌手マリア・エウジェニア(Maria Eugênia)によって育てられた(つまり、彼には“母親”が二人いる)。フランシスコが4歳の頃、母親の歌は叫びすぎて嫌だ、僕はマリーザ・モンチの方が好きだと言ったため、母カッシアはその後より穏やかな歌い方へと変えたというエピソードも。

幼少期から母の影響でロックやMPBを聴いており、英語はビートルズを聴いて覚えたという。7歳の頃、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」をレパートリーに加えてほしいと母に懇願すると、母はロック・イン・リオ・フェスティバルで約20万人の前でそのカヴァーを演奏。当時7歳のフランシスコもパーカッションを演奏し特別出演した。

2001年に母カッシアが心臓発作により急死すると、後見人をめぐって裁判となり、前例のない判決により同性パートナーであるマリア・エウジェニアに後見人としての権利が認められた。

子供の頃に母親のバンドのパーカッショニストであるラン・ラン(Lan Lan, 本名:Elaine Silva Moreira)からパーカッションを学び、高校時代にはギターを習った。複数のバンドで演奏をつづけ、2015年にシコ・シコの芸名を名乗るようになる。2020年にジルベルト・ジル(Gilberto Gil)の孫にあたるSSWフランシスコ・ジル(Francisco Gil)とのデュオ名義でアルバム『Onde?』をリリースし、デビューを飾った。

Chico Chico – vocal, guitar
Pedro Fonseca – keyboards
Guto Wirtti – contrabass
Jorge Continentino – baritone saxophone, flute
Thiaguinho Silva – drums
Walter Villaça – electric guitar, acoustic guitar

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