音楽の遺伝子を継ぐ二人による稀有な傑作。フラン&シコ・シコ『Onde?』

fran & Chico Chico - Onde?

フラン&シコ・シコという無名デュオの傑作

フラン&シコ・シコ(Fran & Chico Chico)という無名なデュオの音楽に惹かれた。

デュオとしてのデビューアルバムらしき『Onde?』から、最初に聴いた曲は(4)「Isso Não Vai Ficar Assim」だった。
イタマール・アスンサォン(Itamar Assumpção)の名曲のカヴァー。ブラジルの伝統音楽とロックの完璧な融合のひとつであるこの名曲を、とても心地良いリズムと声で歌うこの二人はいったい誰なんだろう?

好奇心から調べてみると、ふたりの出自は、彼らが何者であるか?を知るには充分すぎるものだった。

イタマール・アスンサォンの名曲(4)「Isso Não Vai Ficar Assim」を演奏するFran & Chico Chico

ブラジル音楽の伝説の息子たち

フランことフランシスコ・ジル(Francisco Gil)はMPBの巨匠ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)の孫であり、歌手プレタ・ジル(Preta Gil)の息子。

シコ・シコことフランシスコ・エレール(Francisco Eller)は早世のSSWカッシア・エレール(Cássia Eller)の息子。

ともに20代後半で、音楽歴は短いわけではない。事実、ジルベルト・ジルの孫フランは2020年にソロアルバム『Raiz』もリリースしている。

フランとシコ・シコは、友情から始まり、ともに音楽を創ることでひとつの結実を迎えた。

ふたりのオリジナルは(6)「Ninguém」のみで、ジルベルト・ジルの(7)「Procissão」含む他の曲はブラジル音楽の先人たちのカヴァーだが、このオリジナル曲がまたしみじみと良い。注目すべき若手ギタリスト、ペドロ・フランコ(Pedro Franco)のギター一本を伴奏に、パンデミックによって時間が止まってしまい、音楽が消えてしまった街への嘆きを歌うふたりの声には諦めと逆説的な希望が滲む。

(6)「Ninguém」
fran & Chico Chico - Onde?
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