ブラジル北東部音楽とジャズ・ヴァイオリンの個性的な融合。名手ヒカルド・ヘルス、トリオ新作

Ricardo Herz - Sonhando o Brasil

ヴァイオリン奏者ヒカルド・ヘルス新譜『Sonhando o Brasil』

ブラジルのヴァイオリン奏者ヒカルド・ヘルス(Ricardo Herz)、ピアニストのファビオ・レアンドロ(Fabio Leandro)、そしてドラマーのペドロ・イトー(Pedro Ito)によるトリオ作『Sonhando o Brasil』は、ブラジル土着のリズムとジャズやクラシックが混ざり合った楽しい音楽を聴くことのできる逸品だ。

収録曲はすべてヒカルド・ヘルスの作曲。(1)「Coco Embolado」はブラジル北東部音楽であるコーコ(Coco)、そしてエンボラーダ(Embolada)にインスパイアされており、ブラジル北東部音楽に欠かせないハベッカ1を彷彿させる。

5拍子の奇妙なメレンゲ(3)「Dicharachero (Alegre)」や7拍子のマラカトゥである(6)「Siribobéia」などの遊び心も面白い。ブラジルだけでなく、クラシックやジャズ、ラテン音楽などヒカルド・ヘルスの幅広い見識がこれらのユニークな楽曲の礎にあることは間違いない。

(8)「Sonhando o Brasil no Frevo」

今作には優れたゲストも3人、クレジットに名を連ねる。
(4)「Cenas do Magrebe」にはヴォーカリストのタチアナ・パーハ(Tatiana Parra)が参加し、得意のスキャットで彩りを添えている。つづく(5)「Melodiemonos」にはフルート奏者レア・フレイリ(Léa Freire)がゲスト参加し、ヴァイオリンとフルートの情緒豊かな掛け合いを見せる。
打楽器奏者のゼー・ルイス・ナシメント(Ze Luis Nascimento)はタチアナ・パーハとともに(7)「Sombo Chambado」に参加し、創造的でユニークなパーカッションを聴かせてくれる。

サンパウロのセスキ・ポンペイア(Sesc Pompéia)で行われたライヴの映像

Ricardo Herz 略歴

ヒカルド・ヘルスは1978年ブラジル・サンパウロ生まれ。6歳の頃からサンパウロのクラシック音楽専門校、フクダ研究所(Instituto Fukuda)で学び、のちにサンパウロ国立大学(USP)のヴァイオリン科を修了。その後は米国のバークリー音楽大学とフランスのディディエ・ロックウッド・ミュージック・センターでジャズを学んでいる。

2010年にパリからブラジルに帰国後はソリストとして様々なオーケストラと共演したり、自身のジャズバンドや、さらにはアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)ややマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)といった著名なアーティストとの共演などジャンルを問わず活躍。まさに現代のブラジルを代表するヴァイオリン奏者としてその名を馳せている。

Ricardo Herz – violin
Pedro Ito – drums, percussion
Fábio Leandro – piano

Guests :
Léa Freire – flute (5)
Tatiana Parra – vocal (4, 7)
Zé Luís Nascimento – percussion (7)

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  1. ハベッカ(Rabeca)…ポルトガル発祥の素朴なヴァイオリン。ポルトガルやブラジル北東部、カーボベルデでよく用いられる。 ↩︎
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