自然体の美声と土着のリズムが堪らない、レバノン系ブラジル人SSWタミレス・タヌース

Thamires Tannous - Canto-correnteza

自然体の歌声と土着のリズムが堪らない、タミレス・タヌース『Canto-correnteza』

ブラジル南東部のカンポ・グランヂ出身のSSW、タミレス・タヌース(Thamires Tannous)の2ndアルバム『Canto-correnteza』は、シンプルで美しい編曲にブラジル土着のリズム、そこにタミレス・タヌースの透き通る自然体の歌声が微風のように乗る極上のMPB作品だ。

収録曲はシコ・セザル(Chico César)との共作(5)「Caipora」など、一部に共作曲やカヴァーもあるがほぼ全てが彼女のオリジナル曲。作風はブラジル音楽よりも米英のロックやフォークの影響が濃そうなシンプルな構造のものが多いが、バックのギターやパーカッションの演奏はブラジル音楽特有の深みのあるリズムや音色が基調となっており、親しみやすくも飽きのこないサウンドに仕上がっている。(2)「Serena」や(6)「Catimbó」などのサウダージ感も堪らない。

前出のシコ・セーザルの他、フランスのチェロの巨匠ヴァンサン・セガール(Vincent Segal)や前作にも参加していたブラジルの鬼才ヴァイオリニスト、ヒカルド・ヘルス(Ricardo Herz)、名アコーディオン奏者ベベ・クラメール(BB Kramer)といった豪華なゲストミュージシャンの参加も見逃せない。

サウダージ感溢れるメロディーと、ブラジル土着のリズムが心地良い(2)「Serena」

タミレス・タヌースはレバノン系のブラジル人。
ブラジルには先祖にわずかでもレバノン系の人物がいると推定される人は600万人〜700万人おり、これはレバノンの総人口を上回る。有名どころでは経営者のカルロス・ゴーン、音楽家ではエグベルト・ジスモンチやアンドレ・メマーリなどがレバノン系ブラジル人として知られている。
彼女の2014年のデビュー作『Canto para Aldebarã』ではそうしたルーツを意識したようなアラブ音階を用いた楽曲も見られたが、今作でも随所にそうした影響が現れ、アフロルーツのリズムと相まって無国籍感溢れるミステリアスな魅力を醸し出している。

本作のもう一人の立役者、ギタリスト/プロデューサーのミッヒ・フジチュカ

本作のプロデュースを担当する7弦ギタリスト、ミッヒ・フジチュカ(Michi Ruzitschka)はオーストリア出身。ブラジル音楽の魅力に取り憑かれ、バークリー音楽大学卒業後にブラジル音楽を極めるためにサンパウロに渡ったという経歴の持ち主。ダニ・グルジェル(Dani Gurgel)が主宰するノヴォス・コンポジトーレス(Novos Compositores = 新しい作曲家たち)界隈で初期から活躍してきたギタリストで、2017年作『SP』はブラジリアン・ギターファン必聴の知られざる佳作だ。

(4)「Levita」のライヴ映像。
Thamires Tannous - Canto-correnteza
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