ナタリア・ラフォルカデ、音楽に誠実に向き合った内省的新譜『Cancionera』

Natalia Lafourcade - Cancionera

メキシコ音楽文化のアイコンとなったナタリア・ラフォルカデの新作

前作『De Todas las Flores』(2022年)でグラミー賞「最優秀ラテン・ロック/オルタナティブ・アルバム」を受賞したメキシコのシンガーソングライター、ナタリア・ラフォルカデ(Natalia Lafourcade)の2025年の新譜『Cancionera』は、過去数年間で取り組んできたメキシコの伝統的な音楽文化への探訪の経験が強く反映された自作曲で構成されており、とりわけ“音楽の魂”を尊重するために編集を最小限に抑えたライヴ一発録音によって特徴づけられた作品となっている。

アルバムのタイトルは“歌”を表す「cancion」に女性形の接尾辞「-era」をつけた造語で、“歌姫”のニュアンスがある。ナタリア・ラフォルカデはこの言葉が表す“歌姫”を、自身の内なる声や音楽を通じて真実を表現する自由な存在として定義し、アルバムのテーマであるメキシコの伝統音楽、詩、女性としての自己探求を象徴し、かつ彼女の故郷であるベラクルスの文化やメキシコ映画の黄金時代の情緒を反映したものだとしている。

(2)「Cancionera」

アルバムには多彩なゲストが参加しており、そのコラボレーションも楽しい。
メキシコの男性歌手エル・ダビド・アギラール(El David Aguilar)がナタリアとともに歌う(4)「Como Quisiera Quererte」、エクアドル系スイス人デュオのヘルマノス・グティエレス(Hermanos Gutiérrez)が参加する(11)「Luna Creciente」、フラメンコのアイコンである歌手イスラエル・フェルナンデス(Israel Fernández)と、ギタリストのディエゴ・デル・モラオ(Diego del Morao)をフィーチュアした(13)「Amor Clandestino (Acústica)」などが聴きどころだ。

(11)「Luna Creciente」

今作でのよりノスタルジックで親密なアプローチは、圧倒的な完成度を誇った前作『De Todas las Flores』と比較すると物足りなく感じるリスナーもいるかもしれないが、今作はナタリア・ラフォルカデの音楽に対する誠実さや、一貫した芸術的姿勢が表れた素晴らしい作品だと感じる。

Natalia Lafourcade 略歴

ナタリア・ラフォルカデは1984年にメキシコシティで生まれ、ベラクルス州で育った。
父親は音楽家、母親は音楽教育者/ピアニストという音楽一家で育ち、母親が考案した子供向け音楽教育法”Macarsi Method”の実践によって幼少期から様々な音楽に親しんだ。14歳でバンド「Twist」に参加し、音楽キャリアをスタート。2002年、18歳でリリースしたデビューアルバム『Natalia Lafourcade』は、ラテンポップとロックを融合したサウンドや、その天真爛漫な彼女のイメージとともに世界的に大ヒットした。

2015年の『Hasta la Raíz』は、グラミー賞(最優秀ラテン・ロック/オルタナティブ・アルバム)と5つのラテン・グラミー賞を受賞し、彼女の代表作となった。2017年の『Musas』以降はメキシコの伝統音楽への回帰を深め、タイニー・デスク・コンサートのパフォーマンスなどでも音楽家としての成熟を見せていく。

2017年にはディズニー/ピクサー映画『Coco(邦題:リメンバー・ミー)』の主題歌の歌手にも抜擢されるなど、メキシコを代表するシンガーソングライターとして高い評価を得ている。

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