メキシコの歌姫ナタリア・ラフォルカデ、自身のルーツを見つめる激良新譜『メキシコのための歌』

Natalia Lafourcade - Un Canto por México, Vol. 1

Natalia Lafourcade 『Un Canto por México, Vol. 1』

ポップ/ロックシンガーとしてキャリアをスタートしたメキシコを代表する歌姫、ナタリア・ラフォルカデ(Natalia Lafourcade)は近年ますますルーツミュージックへの傾倒を見せている。彼女の2020年新譜『Un Canto por México, Vol. 1』はそのタイトルが示すようにオリジナル曲からカヴァーまでメキシコのための歌の数々が収められている。

この驚くほどルーツミュージックに接近した今作が生まれた背景には、2017年9月19日に発生したメキシコ中部地震がある。このマグニチュード7.1の地震は、ナタリアが住む首都メキシコシティにも被害をもたらし、20以上の建物が倒壊、361人の死者を出した。
この出来事を受けてナタリア・ラフォルカデは同年に「Un Canto por México」と題したコンサートを多数のゲストを迎えて米ロサンゼルスで敢行。その収益の全てをメキシコの復興のために寄付した。本作は、そのコンセプトを引き継いだスタジオ録音のアルバムで、COVID-19のためにデジタル形式でのみリリースされたものだ。

(7)「Mi Religión」のMV。

このアルバムでの彼女の佇まいや歌はまさしく伝統的メキシカン・マリアッチそのもので、「メキシコからこにゃにゃちわ」とかいうあまりに酷い邦題で売り出された大ヒットデビュー作『Natalia Lafourcade』(2002年)を覚えている人にとっては驚き以外のなにものでもないだろう。

2015年にフアン・ガブリエル(Juan Gabriel)とナタリアが歌い、YouTubeでは2億5千万回の再生を記録した(6)「Ya No Vivo por Vivir」の再演や、前作『Musas』に収録された(2)「Mexicana Hermosa」といった彼女の代表曲も、(3)「Veracruz」や(14)「Cucurrucucú Paloma」といったメキシコの古い作曲家たちの名曲も、彼女が歌えば可憐に蘇る。なんというか…“温故知新”という言葉がこれほど当てはまる音楽もなかなかないように思える。

Natalia Lafourcade - Un Canto por México, Vol. 1
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