南アフリカのSSW、ガビ・モトゥバによる新しい『The Sabbath』
南アフリカの気鋭シンガーソングライター、ガビ・モトゥバ(Gabi Motuba)の2枚目のフルアルバムとなる『The Sabbath』(2024年)が素晴らしい。敬愛する父親を新型コロナウイルス感染症で亡くしたことをきっかけに制作した、弦楽四重奏を中心とした前作の5曲入りEP『The Sabbath』(2022年)をより発展させた形となっており、彼女のこれまでの作品と同じように弦楽四重奏をサウンドのコアとしつつ、ギターやドラムスなどを加えたジャズに寄せた編成で奏でられる音楽は至福の極みだ。
収録された楽曲は生々しいライヴ感がある。著名なライター/音楽評論家であるグウェン・アンセル(Gwen Ansell)は今作を“音楽を通じて説かれた力強い音響神学の作品”と評したが、言い得て妙だ。楽曲の全ての声、弦楽器や打楽器による一音一音、そして適切にコーティングされた音響、これらが一体となって洗練された芸術を作り上げている。それは深い瞑想であり、癒しであり、さらには高揚でもある。
派手ではないが、亡き父に宛てた鎮魂歌である(3)「Ntate Motuba’s Requiem」など、彼女の表現家としての真骨頂だ。2分にも満たない短い楽曲の中に、シンプルだが胸を打つメッセージを込める。
アルバムタイトルである「Sabbath」とは“安息日”。4曲目から6曲目は「The Sabbath Movement」というタイトルが冠せられた組曲で、内省的でドラマティックな展開を見せる。
バックを支えるミュージシャンでとりわけ注目すべきはギターのレザ・コタ(Reza Khota)、ドラムスのトゥミ・モゴロッシ(Tumi Mogorosi)、トランペットのロビン・ファッシー(Robin Fassie)あたり。演奏は技巧的に優れているだけでなく、ガビ・モトゥバの気持ちがバンドと一体となったような表現力は驚くべきものがある。
アルバムを通して聴くことで、より深く感じ入ることができる稀有な作品だ。
Gabi Motuba プロフィール
ガビ・モトゥバ(本名:Gabisile Motuba)は南アフリカのマメロディに1992年に生まれた。首都プレトリアのツワネ工科大学(TUT)でジャズ音楽を学び、2013年に卒業。2019年、ガビ・モトゥバはTUTに戻り、ジャズ即興演奏を専攻し、ジャズ音楽のBテック(工科学士号)も取得している。
2017年のソロデビュー作『Tefiti (Goddess of Creation)』はストリングスや声をフィーチュアしたスピリチュアルなサウンドで注目を集め、ヴォーカリスト/作編曲家として大きな注目を集めた。
2019年にはシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ(Shabaka And The Ancestors)でも活躍する南アフリカの著名なドラマー、トゥミ・モゴロッシ(Tumi Mogorosi)のアルバム『Project Elo』にシンガーソングライターとして参加。
シャーデー(Sade)、スティング(Sting)、ボーイズ・トゥ・メン(Boyz II Men)、アブドゥーラ・イブラヒム(Abdullah Ibrahim)などを愛聴し、ガビの音楽観にも大きな影響を与えた最愛の父はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)によって2020年に亡くなった。ガビはこれを転機に『The Sabbath』の制作を開始。個人的なストーリーを反映し、亡き父に捧げるEPとフルレンス・アルバムを制作し発表した。
Gabi Motuba – vocal
Zos Ntuli – violin
Chevonne Plaatjies – violin
Themba Mashobane – cello
Thembinkosi Mavimbela – contrabass
Reza Khota – guitar
Robin Fassie – trumpet
Thabang Tabane – percussion
Tumi Mogorosi – drums