still, there is the sea / Ambre Ciel
カナダ・モントリオール出身の音楽家、アンブル・シエル(Ambre Ciel)がデビュー作『still, there is the sea』をリリースした。アルバムは英国のゴンドワナ・レコード(Gondwana Records)からのリリースで、ピアノやストリングス、声を中心とした深淵なサウンドが、同レーベルを代表するアーティストであるハニャ・ラニ(Hania Rani)を彷彿させる。内省的で美しい、ポスト・クラシカルの注目作だろう。
今作は現代クラシック音楽、印象派の世界観、アンビエントやミニマル・ミュージックから影響を受けた音像の広がりが魅力的だ。アルバムに通底するテーマは“水”。(2)「eau miroir」は水が鏡のようなものだということ、(3)「cycle」は循環的で永続的な動きを体現し、(4)「atlantis」は内向きの探求と世界から距離を置くこと、(6)「sometimes」は雨や嵐の音で、誰かの思考の中で起こる嵐を示している。ピアノ、ストリングス、シンセサイザー、声が多層的に調和し、海の波を思わせる反復するリズムの上で展開していく音像に、まるで自分が陸地の見えない大洋の真ん中で、ただ平和に漂っているかのような不思議な感覚を覚えさせられる。
アンブル・シエル(本名:Jessica Hébert)は6歳でヴァイオリンを習い始め、後にペダルエフェクトやメロディーのループを試みるようになった。大学でより深く作詞作曲やレコーディングを探求し、独自のアイデンティティを確立した。