ドゥア・ウンパ(Dua Empat)、キャリア集大成のセルフタイトル作
インドネシア・ジャカルタの男女ギター・デュオ、ドゥア・ウンパ(Dua Empat)の新作『Dua Empat』がとても心地よい。音楽性はボサノヴァやサンバを経由したジャズのサウンドが特徴的で、多数のゲスト・ヴォーカリストも迎えて涼しい音楽の風を運んでくれる、素敵な作品だ。
主にメロウ・トーンのエレクトリック・ギターを弾く男性ギタリストのアルヴィン・ガザリー(Alvin Ghazalie)と、ガットギターやエレクトリック・ギターを弾く女性ギタリストのミシ・レサール(Misi Lesar)でデュオは構成されている。二人は10年来の付き合いの夫婦で、アルバムの全曲が二人による共作。楽曲はまるでジャズ・スタンダードかと思わせるような普遍的な親しみやすさを持ち、豊かな時間を彩ってくれる。
軽やかにスウィングする(1)「Isn’t It Romantic?」はジャカルタの兄妹デュオ、デュオ・モービーシャーデイ(Duo MobySade)をフィーチュアした幸せな空気の漂う1曲。
アルバムには良曲が揃うが、特筆すべきは(2)「My Funny Guy」だ。ここではスペインの歌手/ピアニストのマール・ビラセカ(Mar Vilaseca)をフィーチュアし、ボサノヴァの影響を強く受けた軽やかな音楽を展開。アクセントとなる木管のアレンジや、マール・ビラセカの柔らかい歌唱やスキャットが素晴らしい。
(4)「Sunshine Serenade」にはアメリカ合衆国出身のベニー・バナックIII(Benny Benack III)をヴォーカル/トランペットでフィーチュア。フォービートを基調とした渋いオーセンティックなジャズは、デュオの音楽への深い敬愛の表れだ。
(5)「Life Is Full of Losses」には歌手ヴァネッサ・ペレア(Vanessa Perea)とトロンボーン奏者ロバート・エドワーズ(Robert Edwards)が参加。
(8)「Would You Be Mine?」にはインドネシアの歌手マリーニ・ナインゴラン(Marini Nainggolan)と、日本出身でスナーキー・パピー(Snarky Puppy)などで活躍するパーカッション奏者の小川慶太(Keita Ogawa)をフィーチュア。サンバからの強い影響を受けた軽快なジャズでアルバムを締めくくる。
Dua Empat 略歴
ドゥア・ウンパは、インドネシアのジャズ・ギターデュオ。ジャカルタ郊外にあるプリタ・ハラパン大学音楽院(UPH)で出会ったアルヴィン・ガザリー(Alvin Ghazalie)とミシ・レサール(Misi Lesar)による夫婦ユニットであり、デュオ名は二人が2015年12月24日に交際を始めたことにちなみ、インドネシア語で「2(dua)」と「4(empat)」に因んで名付けられた。
共通のジャズへの情熱で結ばれた二人は、音楽院時代から互いのギター・テクニックと音楽的感性を磨き合い、独自のスタイルを築いていった。アルヴィンはテクニカルでメロディアスなプレイを得意とし、ミシはリズミカルで情感豊かなアプローチで支えるというスタイルを確立し、2017年にデビューアルバム『Two Of A Kind』をリリース。軽快なギターのインタープレイと親しみやすいジャズ・アレンジで注目を集めた。
同年末にはクリスマスをテーマにした『Swinging Down The Chimney』をリリース。このアルバムは2018年の第21回AMIアワードで「Best Jazz Album」にノミネートされ、インドネシアのジャズシーンでの地位を確立した。
ドゥア・ウンパは以降もコンスタントに作品をリリースし、ベニー・べナックIII(Benny Benack III)や小川慶太(Keita Ogawa)といった国際的なアーティストとのコラボレーションを実現。2024年には5枚目のアルバム『Dua Empat』をリリースし、さらにコラボレーションの領域を広げている。