イスラエルの女性ギタリスト、インバール・フリードマン新作
イスラエル出身のギタリスト、インバール・フリードマン(Inbar Fridman)の新譜『Mercy』。
バンドメンバーには鍵盤奏者のカティア・トゥーブール(Katia Toobool)、ベーシストのリオール・オゼリ(Lior Ozeri)、ドラマーのヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)を迎えている。
メンバーがメンバーだけに、ゴリゴリのプログレッシヴ・ジャズかと思って聴いてみれば全くそんな感じはなく、むしろメロウなトーンのインバール・フリードマンのギターを中心に、とろけるようなエレピやフレットレス・ベースが絡む良質なエレクトリック・ジャズだ。高度な即興の絡み合いの中で互いの感情が絶え間なく変化し、シームレスに異なる時や空間へと移動してゆく。
公式情報にはないため確かではないが、彼女のギターのまろやかなサウンドはおそらく彼女がナイロン弦のエレクトリックギター(Classical electric guitar, エレガット)を使用していることにも起因している。生のナイロン弦ギターでジャズを演奏するギタリストは多いが、ナイロン弦ギターをエフェクターに繋げて弾くジャズギタリストは希少だ。そういう意味でも面白いサウンドになっている。
カルテットのメンバーにも軽く触れておきたい。
これまでフランスや米国のミュージシャンとの共演作が多かった印象のインバール・フリードマンだが、今作は全員が同郷イスラエルのリモン音楽学校出身者。女性鍵盤奏者カティア・トゥーブールとは女性5人組バンド「Queenta Ensemble」で共に活動をしている。ベースのリオール・オゼリ(Pinhas & Sons のメンバーとして知られる)とドラマーのヨゲフ・ガバイはジャズを基盤にしつつプログレやメタルの分野でも活躍するイスラエルきっての名手だが、今作ではインバール・フリードマンの抒情的な音楽観に寄り添い、抑え目ながらも随所で個性的な小技を効かせた絶妙なプレイを聴かせてくれる。
Inbar Fridman 略歴
インバール・フリードマンはイスラエル生まれのギタリスト/作曲家/音楽教育者。16歳でイスラエルのリモン音楽学校に入学し、ジャズの基礎を学ぶ。その後1999年に渡米し、ニュージャージー州のウィリアム・パターソン大学でジャズ・パフォーマンスの学士号を取得。ニューヨークではマイロン・ウォールデン(Myron Walden)、ウィル・ヴィンソン(Will Vinson)、アーロン・ゴールドバーグ(Aaron Goldberg)、ハリー・ウィテカー(Harry Whitaker)、スティーヴ・カルデナス(Steve Cardenas)といったミュージシャンと共演し、若手女性ギタリストとして注目を集めた。
2005年にイスラエルに戻り、すぐに国際的なグループ「メディテラネオ(Mediterraneo)」と「バタフライ・ドリームス(Butterfly Dreams)」に参加。フランス人ベーシスト、オリヴィエ・ガット(Olivier Gatto)率いるグループでピアニストのカメリア・ベン・ナサー(Camelia Ben Naceur)や、伝説的ドラマーであるビリー・コブハム(Billy Cobham)らとともにヨーロッパ中をツアーした。
2013年に初のリーダー作『Time Quartet Project』をリリース。
Inbar Fridman – guitar
Katia Toobool – keyboards
Lior Ozeri – bass
Yogev Gabay – drums