バイーアの女性アコーディオン奏者リーヴィア・マットス、異色のコラボも必聴の新譜『Verve』

Lívia Mattos - Verve

リーヴィア・マットス 3rdアルバム『Verve』

ブラジル・バイーア州サルヴァドール出身の作曲家/アコーディオン奏者/シンガー、リーヴィア・マットス(Lívia Mattos)の3枚目のアルバム『Verve』がリリースされた。ノルデスチに根付くフォホーなどの音楽文化に根差しつつ現代的で独創的な音を創り、さらに音楽だけでなく映像や舞台といった芸術分野にもシームレスに活動を広げるカリスマである彼女が、今作ではコラボレーションの領域を国外まで幅広く拡張し、国境や文化の壁を取り払い独自の音楽の理想の姿を探求した驚くべき作品となっている。

(1)「Caucaia」はインド出身で国境を超えて活躍する歌手ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)との共演。それぞれが自身が継承する文化に誇りと軸足を置きつつ、国際的な対話を積極的に図る二人の共演はある意味必然的だったのだろう。ここで繰り広げられる音楽は予定調和では成し得ない、文化同士の本気の衝突と融合と爆発──大袈裟に言うならば“ビッグバン”のようなものだ。バンドリンの名手アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)と共演したときにも感じたが、ヴァリジャシュリーの驚異的なカルナティック・スキャットは、ブラジルのリズムや旋律とめちゃめちゃ相性がいい。

ブラジル・ノルデスチ音楽とインド音楽のみならず、バルカン音楽の影響なども加算された衝撃的な楽曲(1)「Caucaia」

(2)「Ndoukahakro」にはセネガルのコラ奏者セニー・カマラ(Senny Camara)が参加し、煌びやかな音色で彩る。楽曲自体にも西アフリカの複雑なリズムがふんだんに取り込まれており、面白い。

アルバム全体で低音を担うのは、より一般的なベースギターやダブルベースではなく、ジェフェルソン・バブ(Jefferson Babu)が吹くチューバだ。これが今作をより特別なものとする重要なエッセンスとなっていることは間違いなく、ドラムスやザブンバ、トライアングルを担当するハファエル・サントス(Rafael Santos)の演奏ともあわせフォホーとジャズ・ブラスバンドの境界を曖昧にし、リーヴィア・マットスのアコーディンも含めたこのコア・トリオが“ノルデスチを軸に世界と対話する”という潜在的なコンセプトを明言している。

西アフリカの音楽にインスパイアされた(2)「Ndoukahakro」

これらの特異なコラボレーションが終わると、アルバムはアコーディオンやヴォーカルによって彼女の想いをより実直に伝える楽曲群へと、ますます深く入り込んでゆく。

この作品は、「息苦しさが募り、生き延びる術が必要なこの時代」だからこそ制作することが必要だったのだ、とリーヴィア・マットスは語っている
「女性のサンフォーナ(アコーディオン)奏者であることは、それ自体が抵抗なのです」
「13kgもある楽器を抱え、そこから軽やかな音色を引き出すこと。それも抵抗です。音楽の世界で女性であることも抵抗です。自由に創造し、即興し、大胆に挑戦することは、私たちにこれまで求められてきたことすべてに逆らう行為なのです」

(7)「Mundo Verde Esperança」はアルバム中唯一のカヴァー曲で、作曲はエルメート・パスコアール(Hermeto Pascoal)。(8)「Como Se Fosse o Mar」はMPBの巨匠イヴァン・リンス(Ivan Lins)との共作だ。
(9)「História de uma Cabeça」はアコーディオン奏者タデウ・ホマーノ(Thadeu Romano)とのコラボレーションで、リーヴィア・マットスのサーカス・アーティストとしての美学と、頭の中の内なるカオスを表現する。

(9)「História de uma Cabeça」

ラストの(10)「Folia de Fole」も印象深い。祝祭的なフレーヴォに強く影響されており、アコーディオン、チューバ、ギター、パーカッションが織りなす郷愁の音楽は、最終的に長い夜を予感させるサンバ・パーティーへと雪崩こむ。

Lívia Mattos 略歴

リーヴィア・マットスはブラジル・バイーア州サルヴァドール出身のアコーディオン奏者/シンガーソングライター。幼少期からバイーアの豊かな音楽文化に触れて育ち、アコーディオンを主軸に据えてブラジル北東部のフォホーやバイアォンに根ざしつつ、アフリカ、カリブ海、インド、ヨーロッパの音楽要素を融合させるなど現代的な感性で独自のスタイルを築いている。

彼女のキャリアは2010年代初頭から本格化し、2017年に初アルバム『Vinha da Ida』をリリース。アレ・シケイラ(Alê Siqueira)のプロデュースで、バイーアの伝統と遊び心ある詩的表現が評価された。2022年の『Apneia』ではシコ・セーザル(Chico César)やナ・オゼッチ(Ná Ozzetti)らと共演するなどコラボレーションを拡大。2025年の『Verve』ではインドのヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)やセネガルのセニー・カマラ(Senny Camara)と共演するなど、さらに異文化との対話を深めた。

これまでに20カ国以上で公演し、ウィーンでのアコーディオン・フェスティバルやニューヨークのフェスティバルに出演。2025年にはカナダ、ヨーロッパ、米国でのツアーを成功させ、「Prêmio Profissionais da Música」を受賞。女性アコーディオン奏者としての抵抗やジェンダーの問題にも言及し、ブラジル音楽の新たな可能性を切り拓く。

Lívia Mattos – accordion, vocals
Jefferson Babu – tuba
Rafael Santos – drums, zabumba, triangle

Guests :
Varijashree Venugopal – vocal (1)
Senny Camara – kora, voice (2)
Aline Gonçalves – flute (7)
Tomás Gleiser – glass cups (7)
Thadeu Romano – accordion (9)

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