新世代の日常の憂いと不安、そして活力を端的に表現する人気女性デュオ Anavitória 新譜

Anavitória - claraboia

人気デュオ、アナヴィトーリアが描く“日常”

ブラジルの人気女性デュオ、アナヴィトーリア(Anavitória)が6枚目となるアルバム『claraboia』をリリースした。日常の何気ないワンショットのようなジャケット写真が象徴するように、過剰な飾りを必要としない、温かく素敵な歌たちに彩られた作品となっている。

(1)「rua dos abacateiros」、(19)「paranapanema」

多くのファンにとって、新しい発見はないかもしれない。アルバムには過去最高の20曲もの楽曲が収録されているが、合計時間は42分と、1曲あたり平均2分程度で次々と場面転換してゆく構成となっている。ブラジルの音楽メディアであるCaderno Popの評価が的確だ:

「Clarabeau」には不思議な点がある。アナヴィトーリアの最新アルバムは、私たちが既に知っているこのデュオの姿をそのまま映し出す鏡のように、新たな要素や彼らの音楽的物語を真に変革するような要素は何も示していない。まるで窓を開けて、違う地平線が見えることを期待するが、そこに見える景色はいつもと同じで、ただアレンジが加えられているだけだと気づくような感覚だ。
このアルバムはデュオのアイデンティティを損なわずに、同時に彼ら自身の可能性を制限するようなコンフォートゾーンを強化している。

Caderno Pop

とにかく多忙で、心の安らぎを延々と流れるTikTokのショート動画に求めてしまう時代にあって、このアルバムは一種の美学のようにも思える。親密なアコースティックのサウンドで、歌詞のテーマも恋愛、人間関係、個人的な内省といった作風は、毎晩ベッドに潜り込んだあとの数分間(ときには数時間)に巡らせた想いをシンプルに言語化し反映したようなもので、多くの人々の心に刺さるのだろう。

(7)「aza」。Anavitória の非凡なメロディメイカーとしてのセンスがもっとも反映された1曲

今作のトピックとして、ゲスト参加するブルーノ・ベルリ(Bruno Berle)とフーベル(Rubel)のことも一応、書いておかなければならないだろう。彼らの参加はブラジル音楽ファンにとって一定の訴求力を持つが、今作の中ではあくまでも“おまけ”の印象を拭えない。それほどにアナヴィトーリアの確立された世界観が強く印象に残る作品だ。

(20)「claraboia」。タイトルはポルトガル語で「天窓」の意味。

Anavitória 略歴

アナヴィトーリアは、ギターとヴォーカルのアナ・クララ・カエターノ・コスタ(Ana Clara Caetano Costa, 1994 – )と、ヴォーカルのヴィトーリア・フェルナンデス・ファルカォン(Vitória Fernandes Falcão, 1995 – )から成るブラジルのフォーク・ポップ・デュオ。ブラジル中北部のトカンティンス州アラグァイナの学校で二人は出会い、YouTubeにカヴァー曲を投稿する活動を始めた。これがシンガーソングライターのチアゴ・イオルク(Tiago Iorc)のマネージャーの目に留まり、そのイオルクのプロデュースのもとで最初のEP『Anavitória』を2015年にリリース。このEPとシングル「Singular」は大成功を収め、その後デュオはクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げデビューアルバム『Anavitória』を2016年にリリースした。

最初のヒット曲「Singular」のライヴの模様

彼女らのキャリアは急速に発展した。ファーストアルバム『Anavitória』はブラジルチャートで6位を記録し、ラテングラミー賞で最優秀ポルトガル語コンテンポラリーポップアルバムにノミネート。続く2ndアルバム『O Tempo É Agora』(2018年)では同賞を受賞し、人気を確立することになった。

音楽スタイルはフォークポップを基調とし、アコースティックなサウンドと二人の美しいハーモニーが魅力。歌詞は恋愛、孤独、自己発見をテーマに、親密で詩的な表現が特長。ブラジル国内だけでなく国際的に活躍し、2024年の欧州ツアーや2025年のモントルー・ジャズ・フェスティバル出演が注目を集めた。

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