英国女性トランペッター、ローラ・ジャードによる孤高のフォーク・グランジ。『Rites & Revelations』

Laura Jurd - Rites & Revelations

トランペット奏者ローラ・ジャード新作『Rites & Revelations』

ロンドンを拠点とする気鋭のジャズ・カルテット、ダイナソー(Dinosaur)のリーダーとして知られ、そのデビュー・アルバム『Together, As One』(2017年)がマーキュリー賞にノミネートされたことで知られるトランペット奏者/作曲家のローラ・ジャード(Laura Jurd)がソロ2作目となる新作『Rites & Revelations』をリリースした。

今作は彼女のキャリアにおいて、もっともスコットランドやアイルランドのフォーク・ミュージックからの影響を前面に押し出した作品となっている。特にサウンド面で大きくフィーチュアされたイギリスのアコーディオン奏者マーティン・グリーン(Martin Green)と、アイルランドのフィドル奏者ウルタン・オブライエン(Ultan O’Brien)の演奏がトラディショナル的な側面で象徴的だが、そこに“伝統的な楽器ではない”ローラのトランペットが絡むことで紛れもないローラ・ジャードの個性が加わる。深いモード・ハーモニー、活発なリズムの変化、ドラマチックな光と影のコントラストは“フォーク=グランジ”(folk-grunge)と形容されるほどに尖っており、今作の“ただスルーすることのできない異様さ”を際立たせる。

(1)「Offering」はまさにその“予兆”だ。得体の知れぬ物語の序章であり、これから起こる壮大な抒情詩への見事なオープンニングだ。ダイナソーのメンバーであるドラマー、コリー・ディック(Corrie Dick)のここでのドラミングはローラ・ジャードのトランペットと肩を並べるほどに支配的で、その”予兆”の何たるかをリスナーに覚悟させる。
いきなり襲い来るカタルシスの後に続く(2)「Step up to the Altar」はイギリスの民謡的でありながら、中東音楽へのローラ・ジャードの興味関心も強く示している。「ジャードは一時的な流行や特定のシーンへの参加には全く関心がなく、ジャズ、ヨーロッパ、中東の民俗伝統からインスピレーションを得た独自のインスピレーションを追い求めている…彼女の作品は常に活気に満ち溢れ、しばしば言葉のない歌を思わせる」とガーディアン紙が評しているように、彼女とそのバンドから放たれる音楽そのものへの情熱的なエネルギーは尋常なものではない。

(2)「Step up to the Altar」(アルバムとは異なる編成による動画)

ヴァイオリンやアコーディオンがケルト音楽の魅力を引き立てる(4)「Lighter & Brighter」も良い。そしてその後につづくカオスなフリージャズ(5)「Life」もまた、彼女の音楽表現のコアだ。

(6)「You Again」(アルバムとは異なる編成による動画)

アメリカのブルースとジャズのスタンダードである(7)「St James Infirmary」の生々しいワンテイク・バージョンも特筆すべき1曲だ。ローラ・ジャードはこれを「壮大で怪物的なパフォーマンス」と自画自賛している。

Laura Jurd – trumpet
Ultan O’Brien – violin, viola
Martin Green – accordion
Ruth Goller – bass
Corrie Dick – drums

Laura Jurd - Rites & Revelations
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