ロシアを代表するピアノトリオ、LRK Trio最新作は若手オーケストラとの繊細かつ壮大な共演。

LRK Orchestra

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ロシアを代表するピアノトリオであるLRK Trioの新作『LRK Orchestra』は、モスクワの若手オーケストラであるユーフォリア・オーケストラ(Euphoria Orchestra)とともに紡ぎ出す壮大なアレンジが印象的なアルバムだ。

LRK Trioのリーダーでピアニストのエフゲニー・レベジェフ(Evgeny Lebedev)は、従前よりオーケストラとの共演を夢見てきたと語っていた。2023年にはモスクワにある全ロシア博覧センター1の宇宙パビリオンでオープンサウンド・オーケストラ(Opensound Orchestra)との共演を成功させており、おそらくはそこから発展的に構想されたのが今作であろう。エリザヴェータ・コルネーエワ(Elizaveta Korneyeva)が創立し、芸術監督を務めるユーフォリア・オーケストラの演奏はエフゲニー・レベジェフの描くヴィジョンを体現し、ジャズ・トリオの即興の余地を残しつつもオーケストラ用に書かれた繊細なスコアを見事な表現力で実現。

(1)「Mr. L.M.」はエフゲニー・レベジェフが影響源として挙げているパット・メシーニ・グループ(Pat Metheny Group)の鍵盤奏者ライル・メイズ(Lyle Mays, 1953 – 2020)へと捧げられたもの。彼らのサウンドを強く意識したであろう楽曲となっており、豊かな楽曲構成は聴きどころも満載だ。

(1)「Mr. L.M.」

(6)「Soyuz-Apollo」は、彼らの2022年作『Prayer』以来、彼らが願う平和へのアンセムとして頻繁に演奏されてきたもの。アメリカ合衆国とソビエト連邦(当時)が手を取り合い実現したアポロ・ソユーズテスト計画2は冷戦のデタントの象徴であり、今もなお戦時下であるロシアに生きる彼らにとっても、縋りたい“藁”のようなものなのかもしれない。

アルバムのEPK(ロシア語)

ロシアを代表するピアノトリオ、LRK Trio

LRK Trioは、ピアノのエフゲニー・レベジェフ(Evgeny Lebedev)、ベースのアントン・レヴニュク(Anton Revnyuk)、ドラムスのイグナト・クラフツォフ(Ignat Kravtsov)により結成されたピアノトリオ。グループ名は3人のイニシャルに因んでいる。

2015年作『Open String』が彼らの最初のリリースだが、当時はトリオ名がなく、アルバムの名義は「Evgeny Lebedev & Anton Revnyuk」となっていた。

初めて「LRK Trio」名義でリリースした2017年作『If You Have a Dream』が欧州などでもヒットしその名を広く知られるようになり、欧州を中心にツアーを行うようになる。日本でも度々演奏を行なっており、2018年作『Urban Dreamer』には日本の童謡「赤とんぼ」のジャズアレンジも収録された。

LRK Trio :
Evgeny Lebedev – piano, accordion
Anton Revnyuk – double bass, electric bass, vocals
Ignat Kravtsov – drums, metallophone, sample pad

Euphoria Orchestra :
Elizaveta Korneyeva – conductor

  1. 全ロシア博覧センター(Всероссийский выставочный центр、Vserossiyskiy vystavochny tsentr、All-Russia Exhibition Centre, 略称:VDNKh)…ロシアの首都モスクワにある広大な常設展示会場。かつてはソ連の国力を示し、各共和国のパビリオンや噴水、庭園、そして現在では宇宙飛行士記念博物館などを含むテーマパークのような公園。1939年に「ソ連国民経済達成博覧会」として開設され、ソ連時代から現在に至るまで、ロシアの科学技術や文化を紹介する重要な場所となっている。 ↩︎
  2. アポロ・ソユーズテスト計画(Apollo-Soyuz test project)…1972年に調印され、1975年7月に行われたアメリカ合衆国とソビエト連邦の共同計画。アメリカのアポロ宇宙船がソビエト連邦のソユーズと軌道上で44時間にわたってドッキングし、両船の表敬訪問や旗の交換、食事会、宣言書への署名などのセレモニーが行われた。これは冷戦の時代における緊張緩和(デタント)の重大な出来事であった。 ↩︎

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