エチオジャズを軸に多文化共生サウンドデザインで魅せる。Black Jesus eXperience『Time Telling』

Black Jesus Experience - Time Telling

エチオジャズ✖️ファンク✖️ヒップホップ。Black Jesus eXperience

エチオピア出身で、難民生活を経てオーストラリアに移住したシンガー、エヌシュ・タイエ(Enushu Taye)が率いる10人以上のミュージシャンや詩人から成るジャズ・コレクティヴ、ブラック・ジーザス・エクスペリエンス(Black Jesus eXperience)の新作アルバム『Time Telling』は、エチオピアの伝統音楽にジャズやファンク、ヒップホップを融合した濃密な音楽体験を約束する作品だ。

これまでにエチオジャズのレジェンド、ムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)との共演でも知られるなど、エチオジャズの世界的な認知に多大な貢献をしてきた彼女らの音楽の集大成と言っても過言ではない。音楽的に非常に洗練されたハーモニーやリズムを用いた楽曲から、日本の演歌などにも共通する原初的なペンタトニック・スケールを用いたエチオピアの伝統音楽の影響を受け継ぐ楽曲まで、そのバリエーションは多様性に富む。そこにさらに、(1)「Earth to Earth」で見られるようなヒップホップの文脈や、オーストラリアの先住民族アボリジナルの伝統楽器であるディジュリドゥが地味に存在感を示すなど、細やかなサウンドデザインに込められたメッセージも伺うことができる。

エチオジャズの影響が色濃い(4)「Stipa」

そんな中でも、やはりルーツに根差したエチオジャズを踏襲した(4)「Stipa」や(6)「People Broken People」といった楽曲の存在感が際立つ。ある種のいなたさと、現代的で多文化なサウンドの融合こそ、このバンドの真骨頂だ。

Black Jesus Experience - Time Telling
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