なんでもありの驚愕ミクスチャー、Pulciperla 圧巻のデビュー作
コロンビアのボゴタを拠点とするパワフルな女性3人組ラ・ペルラ(La Perla)と、フランスのトゥールーズを拠点とするファンキーなジャズロック・カルテットのプルシネルラ(Pulcinella)がコロンビアで出会い、混成した7人組プルシペルラ(Pulciperla)のデビュー作『Tatekieto』が衝撃的な楽しさだ。ジャズ、クンビア、レゲエ、バルカン、ロマ音楽、ヒップホップ、エレクトロニックなどなど様々な音楽要素がごちゃ混ぜになり彼らの世界観を作る。それはまるで極彩色のパーティーのように、終わりがなく、ずっとずっと気持ちいい音が続く。個人的には2000年代のバルセロナ・ミクスチャーの活況に満ちたシーンを彷彿させるサウンドに心が躍った!
アルバムには10曲を収録。よくここまで多様性のある楽曲を作れたものだと感心する。おそらくはバンドに何人か相当にクレイジーな才能がいるのだと思うが、どの曲もアイディアに満ち、音楽的にも音響的にも最高峰のセンスを聴かせてくれる。
唯一のMVも公開されている(1)「Tatekieto」から象徴的だ。南インドのコナッコルの模倣から始まり、フェルディナン・ドゥメルク(Ferdinand Doumerc)のサックスが導く灼熱のラテン流ヒップホップ乱痴気騒ぎ、中間部にはムーディーなブラジル風サンバ・ジャズを加えてゆく。シャープなスペイン語のラップはバルセロナの伝説的グループのオホス・デ・ブルッホ(Ojos de Brujo)を思い起こさせる。
次に(2)「Tabogo」を聴けば、彼らが水を得た魚のようにカオスを完全にコントロールしていることが分かるだろう。トリオの全員がラップをできるラ・ペルラと、先進的なジャズバンドのプルシネルラの相性は抜群だ。アルバムを通して地味に印象的なのはダブルベース奏者ジャン=マルク・セルパン(Jean-Marc Serpin)の音。エレクトリック・ベースでは表現のできないダイナミックかつ粗野なコントラバスの演奏が、このバンドのサウンドをより一層魅惑的なものにしている。
奇天烈な変形レゲエ(4)「Croissant」、 南米のフォルクローレとレゲエが入り混じったような(7)「Grand Hôtel」、シンセとサックスのユニゾンや掛け合いが印象的な(8)「El Gran Godzilla」などなど、どの曲も存分に耳を楽しませてくれる。
Pulciperla について
このプロジェクトは2019年にコロンビアの首都ボゴタで開催されたジャズトロピカンテ・フェスティバル(Jazztropicante Festival)をきっかけに始まり、両バンドのミュージシャンが出会い、交流を深めた結果として形成された。このフェスティバルは、ミュージシャンたちを集めて国際的なコラボレーションを促進するイベントで、プルシネルラ(Pulcinella)とラ・ペルラ(La Perla)それぞれのメンバーが融合し、新たな音楽の化学反応を探求する機会となった。
フランスの4人組プルシネルラは2004年に結成された。バンド名はイタリアの伝統的な即興喜劇コメディア・デッラルテ(Commedia dell’arte)の道化役のキャラクターであるプルチネッラ(Pulcinella)に由来しており、彼らの遊び心ある音楽性を端的に表している。一方のラ・ペルラは2014年に結成されたグループで、コロンビアのカリブ海沿岸の伝統音楽を研究し、歌とパーカッションを基調とした音楽を展開していた。
出会った当初から、彼らはプルシネルラのファンキーなジャズロックと、ラ・ペルラの伝統的なコロンビアのリズムを組み合わせた独自のサウンドを追求し、ライブ活動やレコーディングを通じてプロジェクトを進化させてきた。2025年にリリースされたデビューアルバム『Tatekieto』は、このコラボの集大成として、トロピカルかつアヴァンギャルドなエネルギーを体現している。
La Perla :
Diana Sanmiguel – vocals, maracas, guacharaca
Giovanna Mogollón “Roberta Leono” – vocals, tambor alegre
Karen Forero – vocals, gaïta, tambora
Pulcinella :
Ferdinand Doumerc – saxophones, flutes, keyboards
Jean-Marc Serpin – double bass
Bastien Andrieu – keyboards
Pierre Pollet – drums