ウクライナ文化と北欧ジャズの抒情豊かな出会い──アンドリー・ポカズ&マグヌス・オストロム

Andrii Pokaz & Magnus Öström - Wakeido Island

アンドリー・ポカズ&マグヌス・オストロム 初デュオ作

ウクライナ出身のピアニスト/作曲家アンドリー・ポカズ(Andrii Pokaz)と、スウェーデン出身のドラマー、マグヌス・オストロム(Magnus Öström)のデュオEP『Wakeido Island』。6曲の収録曲はそれぞれに異なる物語性を持ち、ピアノとドラムスの多層的な対話が様々な景色を描き出す、じっくりと耳を傾け浸りたい作品となっている。

アルバムのタイトル「Wakeido Island」とは、アンドリー・ポカズ本人の説明によると、”楽園とトラップ(罠)が混ざり合った場所”を表現しているという。
(1)「Wakeido Island」は今作を象徴する優れた演奏。静謐ながら嵐の予兆を孕んだピアノの和音主体のイントロから、中盤ではタム中心のドラムスでジャケットに描かれた雷鳴の刻を表現し、終盤にかけては”嵐のあとの静けさ”からの一波乱が見事に演出される。

(1)「Wakeido Island」

(4)「Orison」は今作中でもっとも、アンドリー・ポカズのクラシック音楽の素養を感じさせる曲だ。終始マイナー調の思索的な楽曲で、3:15〜6:00頃まで続く悲劇的な物語を感じさせるピアノソロがとにかく素晴らしい。詩的で映像的な構成と、リスナーを惹き込む推進力から感じられるのは、彼のピアノの背景にある語られるべき多くの物語だ。

(4)「Orison」

(6)「In The Cherry Orchard」は成立時期も不明とされるウクライナの人気の伝統曲(原題:Ой, у вишневому саду)のカヴァー。歌詞はロマンティックなもので、恋に落ちた若い少女の物語を描いている。歌詞の主人公の少女は恋人に会うために外出し、桜の園(cherry orchard)でうぐいす(nightingale)のさえずりを聞いていると母親に言い訳する、という内容。
ここではアンドリー・ポカズの思慮深いピアノと、素手ドラムで感情をリズミカルにサポートするマグヌス・オストロムにより、感動的なフィナーレを迎える。

(6)「In The Cherry Orchard」

Andrii Pokaz & Magnus Öström 略歴

ピアノのアンドリー・ポカズはウクライナ・オデーサ出身で、現在も同地を拠点に活動している。ククラシックピアノの国際コンクールで優勝経験があり、ジャズの即興演奏やハーモニー、電子音楽の統合を教える教育者としても活躍。またポカズ・トリオ(Pokaz Trio)のリーダーとしても2枚のアルバムをリリースしている。

ドラムスのマグヌス・オストロムは1965年スウェーデン・スクルツナ生まれで、エスビョルン・スヴェンソン・トリオ(Esbjörn Svensson Trio, e.s.t.)のオリジナルメンバーとして世界的に有名になった。エスビョルン・スヴェンソン(Esbjörn Svensson)の死後はソロ活動を始め、2011年にデビューアルバム『Thread of Life』をリリースするなど北欧ジャズのキーマンの一人として高く評価されている。

Andrii Pokaz – piano
Magnus Öström – drums

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