e.s.t.の遺伝子を継ぐ北欧ジャズトリオRymden、宇宙の果ての未知の惑星での“探索と発見”を感性豊かに描く新譜

Rymden - Valleys and Mountains

未知の惑星に辿り着いたRymden、探索と発見を描く新作『Valleys and Mountains』

ノルウェーのピアニスト、ブッゲ・ヴェッセルトフト(Bugge Wesseltoft)と、ともに元e.s.t.のベース奏者ダン・ベルグルンド(Dan Berglund)とドラマーマグヌス・オストロム(Magnus Öström)によるトリオ、リムデン(Rymden)。3枚目のスタジオ・アルバムとなる『Valleys and Mountains』は一聴した感じ、これまでの開放的で冒険的な印象のサウンドから地に足のついたサウンドにシフトしたような印象を受けた──だが、随所で示唆されるコンセプトの一片からスウェーデン語の「宇宙」という壮大なバンド名を冠した彼らの物語に照らし合わせてみると、これは彼らの新章の始まりであり、サウンドの変化もそれに合わせたものであるという認識に至った。

かつてジャズの新潮流を牽引した彼らだが、今作でのサウンドの新しさという観点では、やはり他の若く勢いのある世代には及ばないかもしれない。しかし、そこは演奏の安定感とアルバム・コンセプトで十二分にカヴァーしているようだ。

宇宙への旅立ちを描いた希望と冒険心に満ちた1st『Reflections and Odysseys』(2019年)から、星間旅行の2nd『Spacesailors』(2020年)を経て辿り着いた“未知の惑星”での冒険が今作のテーマとなっている。新たな大地での探索と発見をテーマに3人のメンバーそれぞれが楽曲を持ち寄り、共同作業のプロセスを経て完成したアルバムは各楽曲ごとに異なる表情をみせ、非常に映像的であるとも言える。音楽が描き出す風景を意識し妄想しながら聴くには、最高の作品であることは間違いない。

(1)「The Hike」にはアメリカ合衆国のギタリスト、ジョン・スコフィールド(John Scofield)がゲスト参加している。個人的にはジョンスコにしてはアウト・フレーズが物足りないが、よく考えてみれば初めて辿り着いた未踏の大地で“アウトすること”は御法度なのだろう。曲名はハイク、ハイキング。つまり、自然の中を安全なルートで長時間歩くことである。アウトはほとんどしないが、ユーモアのある彼の存在はこれからの旅路を明るく照らすようだ。

(1)「The Hike」

e.s.t.の要でもあったマグヌス・オストロムによるリズムの演出が特徴的な(2)「A Walk In The Woods」は、不安と期待が入り混じったような音風景が素晴らしい。

本作のクライマックスは(5)「The Mountain」、そして(6)「Song From The Valley」への流れだろう。小説でいうと起承転結の「転」そして「結」に至る箇所であり、ここで彼らが描き出そうとする物語はリスナーの無限の感性、想像力を大いに刺激する。

(5)「The Mountain」

Rymden :
Bugge Wesseltoft – piano, keyboards
Dan Berglund – bass
Magnus Öström – drums

Guest :
John Scofield – guitar (1)

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