ロンドンのオルタナ・ジャズシーンの新鋭モモコ・ギル 初のソロアルバム『Momoko』

Momoko Gill - Momoko

ロンドンのオルタナ・ジャズシーンに現れた鋭利な個性

米国オックスフォードで生まれ、京都や横浜、そして米国サンタバーバラで育ち、現在はロンドンを拠点とする音楽家モモコ・ギル(Momoko Gill, ギル桃子)のソロデビュー・アルバム『Momoko』が2026年2月にリリースされた。多文化環境で豊かな感性を育み、長年UKのエレクトロニック/ジャズシーンの“秘密兵器”と囁かれた彼女のデビュー作は、実験音楽やエレクトロ・ミュージックだけでなく、多様なシーンから影響を受けたシンガーソングライターとしての充実ぶりが垣間見える劇的な作品となっている。

マシュー・ハーバート(Matthew Herbert)との共同名義の2025年作『Clay』で発揮したクリエイティビティがより充実した形で体現された今作で、ドラマー/鍵盤奏者といった器楽奏者以上に、ヴォーカリストとしての彼女の個性が際立つように感じる。その歌は耳元で囁くような、あるいは独り言のような親密さがあり、その声をサポートするように背後で鳴る極めて精緻なサウンドとともに心地よく耳に届く。

(2)「No Others」

そのサウンドはおそらくミックスを担当したマシュー・ハーバートの影響もあるのだろうが、自然なようでいて、どこか計算された不気味さも同居する。特に実験的な(6)「Test a Small Area」は顕著で、こうした楽曲がアルバムの中心に据えられていることに彼女のアーティスティックな精神性が感じられる。アカデミックな伝統よりも、自身の研ぎ澄まされた感覚が音楽にも強く反映されていることもこの作品の大きな特徴だろう。

(6)「Test a Small Area」

2分から4分程度の楽曲がほとんどを占める中で、(9)「When Palestine Is Free」は最長の6分半ほどの曲。そのコアとなるのは平和への強いメッセージだ。楽曲の中で“We’re only free when Palestine is free” (パレスチナが自由になったとき、初めて私たちも自由になれる)”というリフレインが繰り返され、権力や抑圧、植民地支配といった価値観に対する抵抗運動と呼応し連帯(ソリダリティ)を促している。印象的なコーラスにはアラバスター・デプルーム(Alabaster Deplume)、シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)、ソウェト・キンチ(Soweto Kinch)、コビー・セイ(Coby Sey)、イネス・ルーベ(Inês Loubet)ら非常に多くのミュージシャンも参加。モモコ・ギルの個人の声が、やがて大きなうねりとなって迫り来るような迫力に圧倒される。

(9)「When Palestine Is Free」

Momoko Gill プロフィール

ロンドンを拠点に活動するモモコ・ギル(本名:Momoko Watanabe Gill)は、ドラマー/プロデューサー/シンガーソングライターとして多才な才能を発揮する音楽家。日本、アメリカ、イギリスという異なる文化圏で育った背景を持ち、その多様な視点は彼女の独自の音楽性に深く反映されている。

彼女は独学でドラムや作曲を学び、南ロンドンの実験的な音楽シーンでキャリアを築いてきた。これまでに、マシュー・ハーバート、アラバスター・デプルーム、ティルザ、コービー・セイといった先鋭的なアーティストのプロジェクトに、ドラマーやボーカリストとして参加。特にマシュー・ハーバート(Matthew Herbert)とは2025年に共作アルバム『Clay』をリリースし、高い評価を得た。また、ラッパーのナディーム・ディン=ガビシ(Nadeem Din-Gabisi)とのユニット「An Alien Called Harmony」でも活動している。

2026年2月に自身の名を冠した初のソロアルバム『Momoko』をStrut Recordsより発表した。本作はロンドンの音楽シーンの拠点の一つであるトータル・リフレッシュメント・センター(Total Refreshment Centre)で録音され、マシュー・ハーバートがミックスを担当。アルバムには、ジャズ、ソウル、エレクトロニカ、フォークといったジャンルが融合した11曲が収録されており、彼女の内省的なヴォーカルと、エレクトロニックやジャズの素養を感じさせるサウンド・デザインを特徴としている。

Momoko Gill - Momoko
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