ポーランドの自然と伝統に触発された美しく壮大な叙事詩。ヤチュカ・クワパ&アンドレス・ベエウサエルトの傑作

Jadźka Kłapa - Dobry Duch

アンドレス・ベエウサエルト全面参加!ヤチュカ・クワパ『Dobry Duch』

ポーランドのSSW/マルチ奏者のヤチュカ・クワパ(Jadźka Kłapa)の2025年作『Dobry Duch』は、抒情的な物語を複雑な音楽性に乗せた素晴らしい傑作だ。このアルバムでは、彼女にとって重要な音楽的パートナーであり、アカ・セカ・トリオ(Aca Seca Trio)の鍵盤奏者として知られるアルゼンチンのアンドレス・ベエウサエルト(Andrés Beeuwsaert)を全面的にフィーチュアし、さらにはストリングス・カルテットによって荘厳な世界観な築き上げている。

タイトルは「善き霊」「良い精霊」を意味するポーランド語。ヤチュカ・クワパが歌うポーランド語の歌詞では、ポーランドの山岳地帯の厳しい自然や、そこで受け継がれてきた土着的な信仰心が、彼女のパーソナルな感情と重なり合うように描かれている。それぞれの楽曲は物語を紡ぐように緻密に織り込まれており、ピアノやストリングスを主体とし、ところどころで効果的にサックスやシンセも用いた楽器群と、ヤチュカ・クワパの歌が一体となってページをめくっていく。

アルバム前半は“希望”を意味する(2)「Nadzieja」、(4)「Nadzieja II」が重要なテーマを提示し、“夜の散歩”を意味する壮大で重厚な(6)「Spacer nocny」でひとつの頂点を迎える。つづく(7)「Spacer dzienny」(昼の散歩)は美しいピアノが印象的で、それまでの複雑な音楽性がもたらす精神的な緊張感から、一気に解き放たれたかのように寛いだ雰囲気となる。

(6)「Spacer nocny」

間奏曲を挟み、アルバムの後半にも驚くような展開が待っている。
“私は空っぽ”という意味の(9)「Pusto mi」は暗く重いサウンドで、タイトルのとおり「空虚な感情」が歌われている。しかしそれは絶望というよりは「空っぽになった自分の中に新しい何かが入り込んでくるのを待つ」というような、再生への静かな準備のようなニュアンスを含んでいる。後半ではアンドレス・ベエウサエルトのローズピアノのソロが際立ち、ポーランドのフォークロア的感性と現代ジャズを見事に接続している。

(9)「Pusto mi」

ヤチュカ・クワパとアンドレス・ベエウサエルトの出会いは、数年前にアンドレスのファンであったヤチュカが、彼のイタリア滞在中に対面したことから始まっているという。その後、彼女が出産を経て音楽活動を一時休止し、自身の表現に迷いを感じていた時期に、アンドレスがベルリンでの自身の公演に彼女を招待したことが大きな転機となった。この再会でアンドレスはヤチュカの音楽的才能を強く肯定し、再び創作へと背中を押したことで深い信頼関係が築かれたという。この精神的な絆が結実したことで、ポーランドの土着的な感性とアルゼンチンの現代フォルクローレが共鳴する親密で美しいアンサンブルが生まれた。

ラストの(13)「Dobry Duch」は、この美しい物語の最高の結末だ。物語は、これがいつまでも続いていてほしいという豊かな余韻を残しながら清らかに消えてゆく。

(13)「Dobry Duch」

Jadźka Kłapa – lead vocal, upright piano, grand piano, pump organ, Rhodes, soprano saxophone, clarinet
Andrés Beeuwsaert – grand piano, Wurlitzer, glockenspiel, pump organ, electronic, backing vocal
Maciek Szczyciński – bass guitar, contrabass
Marcelo Woloski – percussion, backing vocal
Marcin Żupański – bass clarinet, flute
Dawid Lubowicz – violin
Mateusz Smoczyński – violin
Michał Zaborski – viola
Krzysztof Lenczowski – cello
Paweł Bzim Zarecki – string quartet arrangement

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