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2024

  • 2025-02-18
  • 2025-02-18

イタリア史に散らばる音楽的断片を繋ぎ、重厚な物語に仕立てた鬼才ランベルト・キアンマルギ新譜

イタリアン・ジャズの鬼才ピアニスト/作曲家ランベルト・キアンマルギ(Ramberto Ciammarughi)が、欧州ジャズの象徴的存在のトランペット奏者パオロ・フレス(Paolo Fresu)、打楽器アンサンブルのテトラクティス・パーカッシオーニ(Tetraktis Percussioni)、さらに声楽アンサンブルのアドカントゥス合唱団(AdCantus Ensemble Vocale)、ヴォーカリア合唱隊(Vocalia Consort)から成る大編成を率い録音した圧巻の新譜『Intramontes』。ラテン語で山の間を意味するが、その山々を抜けて、さらにその奥に広がる空間も意味するタイトルの通り、刺激的で示唆に富む音響が広がる作品だ。

  • 2025-02-13
  • 2025-02-12

“豪州ジャズの未来”ロス・マクヘンリー、壊滅的な森林火災や家族の想い出をテーマにした新譜

オーストラリア出身のベーシスト/作曲家ロス・マクヘンリー(Ross McHenry)の5枚目のアルバム『Waves』(2024年)。2019年の夏のオーストラリアを襲った史上最悪の森林火災をきっかけに制作された。バンドはドラムスのエリック・ハーランドやピアノのマシュー・シーンズを中心に、テナーサックスのダニー・マッキャスリン、トランペットのアダム・オファーリル、ギターのベン・モンダーとNYで活躍するスターが集結。前述の災害を含め、ロス・マクヘンリーの個人的な記憶に基づく出来事で覆われており、全体的に彼の優れたストーリーテラー/作曲家としての輝きを強調する素晴らしく調和した演奏で、“内省的”という看板を掲げるに相応しい作品となっている。

  • 2025-02-11
  • 2025-02-10

ギターと木管の美しいイタリアン・ジャズ・デュオ、ベアザッティ&カサグランデ

イタリアのサックス/クラリネット奏者フランチェスコ・ベアザッティ(Francesco Bearzatti)と、同じくイタリアのギタリストのフェデリコ・カサグランデ(Federico Casagrande)の極上のデュオ作『And Then Winter Came Again』。音楽は穏やかだが、ジャズを軸にジャンルの壁なく活躍してきた誇り高き気鋭の音楽家である二人の実験的な精神がさりげなく詰め込まれた極上の作品となっている。

  • 2025-02-06
  • 2025-02-05

ポルトの新世代ヴィブラフォン奏者エドゥアルド・カルヂーニョ、豊かな音像の現代ジャズ新譜

ポルトガルの新世代ジャズ・ヴィブラフォン奏者エドゥアルド・カルヂーニョ(Eduardo Cardinho)の3枚目のアルバム『Not far from paradise』は、ジャズ、現代音楽、クラシックといった要素が高次元で融合した知性的な作品だ。7人編成のバンドには特別な才能が集結し、高度な即興のロジックの上に成り立つ自由な実験的精神性が発揮された演奏が繰り広げられる。

  • 2025-01-31
  • 2025-07-05

魅惑のポップネスと芸術的な独創性が同居する奇跡のバンド Fievel Is Glauque、洗練極める3rd

予測不能な奇妙なポップネスが炸裂する話題作!米国ニューヨーク出身のマルチ奏者ザック・フィリップス(Zach Phillips)と、ベルギー・ブリュッセル出身のシンガー、マ・クレマン(Ma Clément)によるオルタナ・ジャズポップ・ユニット、ファイベル・イズ・グローク(Fievel Is Glauque)による2024年作『Rong Weicknes』。そのオリジナリティは新鮮で突き抜けており、キャッチーでアーティスティックなセンスに脱帽。

  • 2025-01-30
  • 2025-01-30

ブラジル最高の作曲家が遺した音楽を芯まで味わう。パウラ・モレレンバウム&アルトゥール・ネストロフスキ『ジョビンの歌』

あらためて、アントニオ・カルロス・ジョビンは史上最高の作曲家だったと思う。彼がこの世を去って久しいが、遺された作品のあまりに洗練されたコードとメロディー、そして詩情豊かな歌詞──その多くはヴィニシウス・ヂ・モライスの才能によるものだが──による奇跡的な音楽は、今も多くの人々を惹きつけてやまないし、その“新しさ”は決して古臭くなることがない。

  • 2025-01-26
  • 2025-01-26

流浪の民の悲喜浮かぶ女性ブラスバンド、バルカン・パラダイス・オーケストラ新譜『Nèctar』

バルセロナのジプシー・ブラスバンド、バルカン・パラダイス・オーケストラ(Balkan Paradise Orchestra, BPO)。誰もが踊りたくなるような力強いバルカン・ブラスに、女性のみの大編成というビジュアルの華やかさも相まって度々SNSでも話題となる彼女らの2024年『Nèctar』は、確固たるバルカンの伝統と実験的な現代性の同居する稀有なバンドによるジプシー・ブラスの傑作だ。

  • 2025-01-21
  • 2025-01-21

Banda Magda のマグダ・ヤニクゥ、四季をテーマにした4部作プロジェクト第1作『For Spring』

マイケル・リーグや小川慶太ら、スナーキー・パピーが強力にバックアップしたことで人気を博したバンダ・マグダを率いるギリシャ出身SSWマグダ・ヤニクゥ(Magda Giannikou)による、ソロ・アーティストとしての新作『For Spring』。今作の名義は「Magda & Banda Magda」となっており、スナーキー・パピーのトランペッター/鍵盤奏者であるジャスティン・スタントン(Justin Stanton)や、ニュージャージー州出身のベース奏者マット・アロノフ(Matt Aronoff)らを迎えたバンドで彼女の独創的な世界観を表現した作品だ。

  • 2025-01-19
  • 2025-03-23

“宗教2世”として育ったブラジル出身新鋭女性ラッパー、ライース。必聴の新世代グローバルHip-Hop

1999年にブラジル・サンパウロに生まれ、新興宗教の信者としての実家での生活に適応できず14歳でアメリカに移住、その後2018年にドイツに移住した女性ラッパー、ライース(Laíz)のデビュー作『Ela Partiu』は、新人とは思えないクオリティに驚かされる作品だ。彼女の確立された個性から放たれるラップ、20名から成るバックバンド”The New Love Experience”によるジャズ、ファンク、トロピカリア、アフロビートなどを境界なく融合した高度なアンサンブルは、この特異な人生を歩んできた新世代のアーティストの登場を盛大に祝福する。

  • 2025-01-17
  • 2025-01-17

UKジャズ新世代アシュリー・ヘンリー、現代社会と個人の関係について考えを巡らせる新作『Who We Are』

一躍ロンドンのジャズ・シーンの中心に降り立った2019年のデビュー作『Beautiful Vinyl Hunter』から早5年。ピアニスト/作曲家アシュリー・ヘンリー(Ashley Henry)が待望の新作『Who We Are』をリリースした。幼い頃からレコードに囲まれ、自然と音楽の女神に導かれた時代の寵児による、現在進行形のUKジャズを象徴するような素晴らしい作品だ。

  • 2025-01-15
  • 2025-01-13

荒野を駆け出す北欧現代ジャズ。アレクシ・トゥオマリラ新譜『Departing the Wasteland』

フィンランドのピアニスト/作曲家のアレクシ・トゥオマリラ(Alexi Tuomarila)の新作『Departing the Wasteland』は、エスビョルン・スヴェンソン・トリオ(e.s.t.)以降の現代的な北欧ジャズの雰囲気を持つ作品だ。ロックや現代音楽の趣向を反映した構成で、技巧と感情のバランスの取れた総合的に優れたアルバムとなっている。

  • 2025-01-13
  • 2025-01-13

仏気鋭ピアニスト、バティスト・バイイ 欧州と地中海沿岸を旅する新譜『La Fascinante』

フランスの気鋭ピアニスト/作曲家バティスト・バイイ(Baptiste Bailly)の新譜『La Fascinante』は、欧州や地中海周辺の伝統的な音楽の影響を幅広く織り交ぜた、繊細で詩的な素晴らしい音楽作品だ。非常に映像的、物語的な印象を受けるアルバムで、楽曲の多様性は地中海周辺を巡る旅路のようにも感じられる。

  • 2025-01-12
  • 2025-01-10

シアトルの気鋭ピアニスト、ビル・アンシェルのユニークな個性と創造性『Improbable Solutions』

米国シアトルのジャズ・ピアニスト/作曲家、ビル・アンシェル(Bill Anschell)の2024年作『Improbable Solutions』。自分にとって名前も演奏も初めて聴くピアニストで、とても瑞々しく若い感性が作曲やサウンドの随所に感じられたので若手かなと思っていたが、なんと1959年生まれの還暦過ぎのベテランだった。