- 2023-08-03
- 2023-08-03
ロンドンで活躍するテルアビブ出身鍵盤奏者ヨニ・メイラズ。悪霊祓いをテーマにしたデビュー作
イスラエル出身でロンドンを拠点に活動する鍵盤奏者ヨニ・メイラズ(Yoni Mayraz)による初のフルレンス・アルバム『Dybbuk Tse!』は、ヒップホップやネオソウル、ロックの影響も感じさせるハイブリッドな現代ジャズ作品だ。バンドメンバーには活発なイスラエルのジャズシーンの中でも特に勢いのある精鋭を揃え、先進的な演奏を聴かせてくれる。
イスラエル出身でロンドンを拠点に活動する鍵盤奏者ヨニ・メイラズ(Yoni Mayraz)による初のフルレンス・アルバム『Dybbuk Tse!』は、ヒップホップやネオソウル、ロックの影響も感じさせるハイブリッドな現代ジャズ作品だ。バンドメンバーには活発なイスラエルのジャズシーンの中でも特に勢いのある精鋭を揃え、先進的な演奏を聴かせてくれる。
ジミ・プラサド(Jimi Prasad)は、イスラエルの気鋭レーベル Raw Tapes の中心人物であるトランペッターのアヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)とビートメイカーのリジョイサー(Rejoicer)と2019年から創作活動を始めた。この革新的なトリオはジミ・プラサド・オーケストラ(Jimi Prasad Orchestra)と名付けられ、2022年の10月に最初のシングル(6)「Down & Up (Unending Love)」をリリース。トランペットやチェロなど古典的な楽器と、あるようでないビートやヴァース・コーラスを組み合わせた独自の音楽表現を提示して見せた。
シンガーソングライター/ギタリストのオムリ・ポラット(Omri Porat, ヘブライ語:עומרי פורת)を中心にイスラエルのエルサレムで結成されたグループ、ティユル(Tiyul)のデビュー作『Shibolim』が最高に心地いい。バンドは4人で、オムリ・ポラットによるガットギターとヴォーカルのほか、フルート、ダブルベース、パーカッションという編成。木漏れ日のような温かくオーガニックなアンサンブルは音楽的に非常に洗練されており、リラックスの極致を味わわせてくれる。
「私たちは皆、一対の目をもっているが、“見る”ということには無数のレイヤーがあります」イスラエルのピアニスト、ウリエル・ヘルマン(Uriel Herman)は語る。「視界に入るだけのこともあれば、意識的に見るものを選ぶこともできる。私たちの記憶や夢は、それらに訪れる度に異なる色で描かれるがゆえに、どの瞬間も内側と外側を見ることで特別な意味が与えられるんだ」
現代イスラエル・ジャズシーンを代表するベーシスト/作曲家、ヨセフ・ガトマン・レヴィット(Yosef Gutman Levitt)新譜 『Soul Song』は、これまでバンドを組んできたオムリ・モール(Omri Mor, p)とオフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya, ds)に加え、バークリー時代の旧友であるギタリストのリオーネル・ルエケ(Lionel Loueke)を加えた超豪華カルテットでの作品となった。
イスラエル出身のマルチ木管奏者、ギラッド・ローネン(Gilad Ronen)による自身3作目のリーダー作『Reflections』。3管含む最大9名のアンサンブルで、スウィングから現代ジャズ、さらにはイスラエル音楽やインド音楽まで幅広く取り込んだ個性的なジャズが聴ける素晴らしいアルバムだ。サックスだけでなくフルート、クラリネットなど木管楽器をマルチにこなす彼だが、今作はテナーサックスに専念している。
イスラエルで活動するエスノ・ジャズバンド、CaifásのデビューEP『The Meggido Sessions』。ジャズや中東音楽をベースにした複雑で個性的な楽曲を、ピアノ、ウード、サックス、ベース、ドラムスのクインテットで聴かせる魅力的なグループだ。数多いイスラエル・ジャズの若手グループの中でも、彼らのその土着志向で右に出るものはなかなかいないであろう。
ピアノ奏者のイタイ・シンホーヴィッチ(Itay Simhovich)、ベースのイライ・サロモン(Ilai Salomon)、ドラムス奏者ヤリ・スターン(Yali Stern)から成るイスラエルのピアノトリオ、Zafioのセルフタイトルのデビュー・アルバム『Zafio』は、同地の活発なジャズシーンを象徴する良作だ。プロデュースはピアニスト/作曲家のトメル・バール(Tomer Bar)が担っている。
中東の伝統音楽にみられる微分音をふんだんに用いつつ、ヨーロッパ最西端の音楽であるフラメンコの要素も融合した驚くべき音楽だった──。イスラエルはエルサレム生まれのベーシスト/作曲家エラン・ホーウィッツ(Eran Horwitz)のデビュー作 『Pashtut』。アルバムのタイトルは“simplicity(シンプルさ)”を意味するもので、彼の人生を32分間に簡潔にまとめました、ということらしいのだが、その内容の濃密さには驚かされるばかりだ。
イスラエルのバンド、スシータ(Susita, ヘブライ語表記:סוסיתא)が2005年にリリースしたアルバム『סוסיתא』が素晴らしい。シンガー/マルチ奏者のメイロン・エガー(Meiron Egger, מירון אגר)と鍵盤奏者ナダフ・ヴィキンスキー(Nadav Vikinski, נדב ויקינסקי)を中心にリモン音楽学校の同級生たちで2003年に結成されたバンドで、本作が唯一のアルバムとなっているが、これがとんでもなくクオリティが高く、驚きと興奮に満ちている。
イスラエルを代表するピアニストのひとり、オメル・クライン(Omer Klein)の最新作『Life & Fire』は、気心の知れた二人の奏者──ベースのハガイ・コーエン・ミロ(Haggai Cohen-Milo)とドラムスのアミール・ブレスラー(Amir Bresler)──との共同名義のピアノトリオ作品だ。
イスラエルの5人の女性ミュージシャンによるジャズバンド、Queenta Ensemble のデビュー作『Shoshana』。“ヘブライ音楽の女王”と称えられる歌手ショシャナ・ダマリ(Shoshana Damari, 1923 - 2006)が歌った歌曲の再発見をテーマとしたカヴァー曲集で、可憐な声をもつヴォーカリスト/編曲家のチェン・レヴィ(Chen Levy)を中心に、ピアノ、フルート、ベース、ドラムスのバンドを従えイスラエルの音楽文化を象徴するかつての名曲を鮮やかに現代に蘇らせている。
つくづく、映画的な音楽を奏でるグループだと思う。ユダヤの伝統文化に深く根ざしたイスラエルの4人組、ニグン・カルテット(Nigun Quartet)。宗教的・民族的な立場からジャズにアプローチする、20代から50代までの世代を超えたバンドである彼らの待望の第2作目『The Sacred and the Profane』も、デビュー作に負けず劣らずの素晴らしい作品だった。
イスラエル出身、現在はデンマークを拠点に活動するピアニスト/作曲家エヤル・ラヴェット(Eyal Lovett)の4thアルバム『Through the Rain』。感傷を運ぶ媒体としての音楽の役割を最高のレベルで体現した、アーティストの感性と表現力がリスナーの想像力を強く刺激する傑作だ。