アラブ、インド、ユダヤ…様々な文化要素をエレクトロも交え再構築する至高のバンド、Taichmania

Taichmania - Seventh Heaven

イスラエルの中東プログレ4人組、Taichmania デビュー作

トルコやアラブの古典音楽やインドの古典音楽を学び、エレクトロニックと融合する独自の活動を続けるイスラエルのウード奏者、ヤニフ・タイヒマン(Yaniv Taichman)の旗振りのもと、イスラエルの豊かなシーンの中でも音楽的感覚と技術で特に抜きん出たグループであるピンハス&サンズ(Pinhas & Sons)のメンバーらを迎えた非常に興味深い4人組バンド、タイヒマニア(Taichmania)のデビュー作がこの『Seventh Heaven』だ。

バンドメンバーは作曲、ウード、サズ、ヴァイオリンとエレクトロニックを担当するヤニフ・タイヒマンのほか、前述のPinhas & Sonsをはじめイスラエルのジャズ/プログレ界隈の最重要リズムセクションとして多数のバンドで活躍するベースのリオール・オゼリ(Lior Ozeri)、ドラムスのシャロン・ペトロヴェル(Sharon Petrover)の最強コンビ、そして鍵盤にはエレクトロの専門家であるヨニ・メルツァー(Yoni Meltzer)という布陣。このメンバーから繰り出される伝統音楽の太い幹の上で四方八方に枝葉を自由に伸ばしていく実験的なスタイルの音楽が、面白くないわけがない。

(1)「Arabesk」ではアラブ音楽に由来する微分音旋律をオーケストレーションに持ち込み、さらにはロックや電子音楽にも次々と橋を架けてゆく。サンプリングされたアラビア語が何を語るかは残念ながら知ることができなかったが、曲名の通りまさしく“アラベスク=アラビア風の唐草模様”の如き神秘的で美しい法則性を秘めた音楽が展開される。

サイケ・トリップな(2)「See Ya at Six or Seven」

アルバムのタイトルにも採用された(4)「Seventh Heaven」は今作のテーマを凝縮したような曲だ。イスラム教やユダヤ教における“セブンスヘブン”、つまり月と太陽に加えて目に見える5つの惑星が天国の層を構成しており、人は死後にその層を順に巡り、最後の第7天国で神に会えるとする考えがテーマとなっており、ここでは伝承物語からSFを結びつけたような音作りが彼らの革新的・創造的な精神性を見事に暴き出す。演奏はときに天国に至るまでの苦難の行程を示すように荒ぶるが、包み込むように流れるシンセパッドの音色などは全てを見通し包容性のなかに吸収する神の存在を強く示唆しているようにも聴こえる。

(4)「Seventh Heaven」

(5)「Saba」でのワウのかかったエレクトリック・ウードとシンセとの絡みも素晴らしい。(6)「Rumorizit」でのヴァイオリンはさらに東、インドの地へも足を伸ばしているし、そこからの後半はエレクトロニックの要素を更に適量増しつつ、最後まで創造性衰えることなくコンセプトと作曲、即興も含めた高度な演奏が一体となった素晴らしい音楽を見せてくれる。

ラストの(10)「Caprice」での目まぐるしく変化する音景色の面白さを、ぜひ味わってほしい。

Yaniv Taichman 略歴

バンドのフロントマンであるヤニフ・タイヒマンはトルコ・イスタンブールでムトゥル・トルン(Mutlu Torun)に師事しウードとトルコ音楽を学び、インドのバラナシでインド古典音楽をシヴァナート・ミシュラ(Shivanath Mishra)に師事。さらにはイスラエルのリモン音楽学校でジャズや現代音楽を学んだという経歴の持ち主。ウード以外にもサズ、ヴァイオリン、ギターを演奏し、フルタイムの音楽家/教師/作曲家として活動している。

古代オスマン帝国の民族音楽とアラビア音楽の数十年にわたる徹底的な研究を経て、Taichmaniaのコンセプトを考案。メンバーを集め、2019年にファーストアルバム『Seventh Heaven』をリリースした。

Taichmania :
Sharon Petrover – drums
Lior Ozeri – bass
Yoni Meltzer – keyboards, electronics, programming
Yaniv Taichman – oud, saz, violin, electronics, programming

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