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ジャズ

  • 2025-09-17
  • 2025-09-17

大西洋を超え共鳴するアフロ・ディアスポラたちの音楽。Balimaya Project × Discos Pacifico All-Stars

大西洋を超え、現代のアフロ・ディアスポラ音楽を体現するふたつの音楽集団が出会い、『Calima』と題された素晴らしい作品を残した。一方はイギリス・ロンドンを拠点に活動し、西アフリカのマンデ族のリズムとジャズを融合する人気バンドのバリマヤ・プロジェクト(Balimaya Project)。もう一方は南米コロンビアを拠点とし、マリンバを中心にアフロ・コロンビアン音楽の熱気を表現するディスコス・パシフィコ・オールスターズ(Discos Pacifico All-Stars)。あわせて16名の規模となる大所帯で、複雑に連帯したリズムと即興的表現が絡み合い、ときにはヴォーカルやコーラスによるアクセントも加えた最高に高揚感のある音楽を聴かせてくれる。

  • 2025-09-16
  • 2025-09-15

ピアノの詩人フレッド・ハーシュ、名手たちと紡ぐ極上のピアノトリオ作『The Surrounding Green』

これほど心が洗われるような音楽は、なかなかない。“ピアノの詩人”ことフレッド・ハーシュ(Fred Hersch)による、ECM第3作目『The Surrounding Green』。ベースのドリュー・グレス(Drew Gress)もドラマーのジョーイ・バロン(Joey Baron)も長年のコラボレーターだが、このピアノトリオ編成でのスタジオ録音は初だという。選曲もオリジナルとカヴァーでだいたい半分ずつとバランスが取れており、万人にお勧めできるジャズ・ピアノトリオの作品であることは間違いない。

  • 2025-09-15
  • 2025-09-15

アフロ・ディアスポラとしてのジェームス・ブランドン・ルイスが紡ぐ“ジャズの核心”

米国のテナーサックス奏者、ジェームス・ブランドン・ルイス(James Brandon Lewis)が自身のトリオによる新作『Apple Cores』をリリース。編成は彼のサックスと、ドラムス/ムビラを担当するチャド・テイラー(Chad Taylor)、主にベースを担当するジョシュ・ワーナー(Josh Werner)というメンバーで、ファンクやスピリチュアル・ジャズを中心に、アフリカへの望郷を感じさせる硬派で力強い作品となっている。

  • 2025-09-14
  • 2025-09-14

独自の詩的情景を描くギタリスト、ヨアヴ・エシェド『Guitar Hearts』が映すNY現代ジャズの多様性

クラシック・ピアニストとしての経験から生み出された独自のアプローチで注目されるジャズ・ギタリスト、ヨアヴ・エシェド(Yoav Eshed)の新作『Guitar Hearts』がリリースされた。今作もカルテット編成を基本としており、NY出身のベース奏者ベンジャミン・ティベリオ(Benjamin Tiberio)と、韓国出身でNYで活躍するドラマーキム・ジョングク(Jongkuk Kim)を前作から引き続き起用。ここに新たにGTOトリオで知られるピアニストのガディ・レハヴィ(Gadi Lehavi)が加わり、全編で素晴らしい演奏が繰り広げられる。

  • 2025-09-13
  • 2025-09-13

モンゴル出身ピアニストと、ドイツ出身低音マルチ奏者。愛情深き男女デュオの初作にして最高傑作

2023年のデビュー作が高く評価されたモンゴル出身のピアニスト、シュティーン・エルデネバートル(Shuteen Erdenebaatar)と、ドイツ出身のベーシスト/クラリネット奏者ニルス・クーゲルマン(Nils Kugelmann)。2020年に出会って以来、音楽だけではなく人生のパートナーとして絆を深めてきた二人による初のデュオ・アルバムが『Under the Same Stars』だ。

  • 2025-09-12
  • 2025-09-12

名手マイケル・ウォルドロップ、アメリカと東欧、南米を結ぶ抒情的な新譜『Native Son』

米国のドラマー/作曲家マイケル・ウォルドロップ(Michael Waldrop)の新作『Native Son』は、ピアノトリオ+パーカッションを中心とした編成でバルカン半島や中東、南米の音楽文化を積極的に取り入れた作品となっており、従来の彼の活動の主軸であったビッグバンドのイメージを覆す作風に驚かされるアルバムだ。

  • 2025-09-10
  • 2025-08-31

日本やアジアの文化を敬愛する南仏発レミ・パノシアン・トリオ、「八」をテーマにしたポップ・ジャズ

フランス初の国際的ポップ・ジャズ・トリオ、レミ・パノシアン・トリオ(Rémi Panossian Trio)の通算8枚目のアルバム『88888888』のテーマは、無限の象徴であり、東アジアの風水文化でもっとも縁起の良い数字とされる「8」をタイトルに冠し、とりわけ東アジアの文化への敬意をユーモラスに表す。シンプルなピアノトリオ編成ながら、楽曲や演奏は豊かな色彩感覚があり、技巧面でも超絶的なジャズでありながら絶妙にキャッチーでポップだ。

  • 2025-09-06
  • 2025-09-06

アウトサイダー・ジャズ daoud、「ok」という言葉の裏に潜む不安や葛藤を描いたメジャーデビュー作

長年作曲家やサイドマンとして音楽の舞台裏で活動してきたトランペッター、ダウド(daoud)。この少しやさぐれた雰囲気を持つ魅力的な芸術家は2024年にアルバム『GOOD BOY』でデビューし、その刺激的で反骨精神に溢れた音楽は大いに注目され、TSF Jazz誌によって年間最優秀アルバムの一つに選ばれるなど成功を収めた。そんな彼が、ドイツの名門レーベルであるACTに移籍し、早くも2作目のアルバム『ok』をリリースした。

  • 2025-09-03
  • 2025-09-03

ロンドンの現代ジャズシーンで注目されるトルコ出身鍵盤奏者ジェンク・エセン新譜『Endlessly』

ロンドンのジャズシーンで注目されるトルコ出身の鍵盤奏者、ジェンク・エセン(Cenk Esen)のアルバム『Endlessly』がリリースされた。カオス・イン・ザ・CBD(Chaos In The CBD)『A Deeper Life』(2025年)への参加でも知られる彼がジャズとエレクトロニックの融合で表現する今作は、移民として住む慣れない街での個人的な苦悩、人間関係、そして周囲の人々や状況が自分の考えや望む通りになることを際限なく期待し、常に失望という結末に辿り着くという自身の癖からインスピレーションを得て制作された。

  • 2025-09-02
  • 2025-08-31

ADHDの特性をジャズの表現に投影する気鋭ピアノ奏者アガ・デルラック新譜『neurodivergent』

ポーランドのピアニスト/作曲家アガ・デルラック(Aga Derlak)の4枚目となるアルバム『neurodivergent』がリリースされた。今作はニューロダイバーシティ(神経多様性)をテーマにしており、ADHDと診断された彼女自身の神経多様性や内面的なカオスを音楽的に表現。音楽的にはやや実験的に、三位一体のピアノトリオと数曲でヴァイオリンのゲストも交え、独創的な世界観の音空間を作り上げた、リスナーに強い印象を残すアルバムとなっている。

  • 2025-08-31
  • 2025-08-31

オランダ出身の気鋭ギタリスト、オリヴィエ・ファン・ニーケルクの鮮烈なデビュー作『U2146x6』

オランダ・アムステルダム出身のギタリスト/作曲家、オリヴィエ・ファン・ニーケルク(Olivier Van Niekerk)のデビュー・アルバム『U2146x6』は、ジャズ・ギターの伝統と革新がバランスよく混ざり合った注目すべき作品だ。アルバムにはビル・フリゼール(Bill Frisell)のカヴァー(3)「Strange Meeting」を除き、全曲オリヴィエ・ファン・ニーケルクのオリジナルを収録。

  • 2025-08-27
  • 2025-08-26

トゥモローズ・ウォリアーズから、また凄い新人が現れた! 中東ルーツのナダフ・シュニールソン、デビュー。

中東にルーツを持つイギリス・ロンドン出身のドラマー/作曲家ナダフ・シュニールソン(Nadav Schneerson)が、7人編成のバンドを率いて録音したデビュー作『Sheva』が面白い。多様かつ優れた若手ジャズ・アーティストを輩出し続けるトゥモローズ・ウォリアーズ(Tomorrow’s Warriors)出身の彼は、文化的多様性の坩堝である同団体で得た多くの学びと、ユダヤ人である自身のルーツを融合させ、熱狂的なジャズ・アンサンブルを創り上げた。

  • 2025-08-26
  • 2025-08-24

よりパーソナルなテーマで挑む、リンダ・メイ・ハン・オーのコードレストリオ新作『見知らぬ天国』

マレーシア出身のベーシスト/作曲家リンダ・メイ・ハン・オー(Linda May Han Oh)の2025年新譜『Strange Heavens』がリリースされた。今作は2009年の彼女のデビュー作『Entry』以来となるコードレス・トリオ(ピアノやギターといったコード楽器を伴わないトリオ編成)に戻った作品であり、これまでも共演を重ねてきたトランペッターのアンブローズ・アキンムシーレ(Ambrose Akinmusire)とドラマーのタイショーン・ソーリー(Tyshawn Sorey)という現代ジャズ界の最高の奏者を迎え、終始スリリングな演奏が繰り広げられる聴き応え充分なアルバムとなっている。

  • 2025-08-24
  • 2025-08-24

時代を超える普遍的な傑作。レイヴェイ、待望の3rdアルバム『A Matter of Time』

2ndアルバムである前作『Bewitched』(2023年)がグラミー賞を受賞し、まだわずか5年程度の活動期間ながら一気に世界的なスタートなったレイヴェイ(Laufey)が、待望の新譜『A Matter of Time』をリリースした。現代のポップカルチャーと、レトロでノスタルジックな音楽を高いレベルで融合した唯一無二の存在であるレイヴェイの魅力と存在感を一段と際立たせる作品として広く注目を集め、おそらくは想像以上の再生回数の数字をもって彼女のスター性をあらためて証明するだろう。