- 2026-06-26
- 2026-06-19
超絶技巧の若手マヌーシュ・スウィングの旗手、グウェン・カユ 多様な音楽性に根差した新譜『Mosaïque』
フランスのギタリスト、グウェン・カユ(Gwen Cahue)の第5作目となるアルバム『Mosaïque』がリリースされた。全編マカフェリ・ギターを弾き、曲によって2種類のトリオを起用した作品で、とかくスピードとテクニックに偏重しがちなジャズ・マヌーシュに高度な叙情性と音楽性を持ち込んだ優れた作品だ。
フランスのギタリスト、グウェン・カユ(Gwen Cahue)の第5作目となるアルバム『Mosaïque』がリリースされた。全編マカフェリ・ギターを弾き、曲によって2種類のトリオを起用した作品で、とかくスピードとテクニックに偏重しがちなジャズ・マヌーシュに高度な叙情性と音楽性を持ち込んだ優れた作品だ。
アルゼンチンのドラマー/作曲家ナウエル・ラマヨ(Nahuel Ramayo)による珠玉のアルゼンチン・ジャズ新譜『De Paisajes Y Colores』。クインテット編成のバンドにはアルゼンチン現代ジャズを牽引するピアニストのセバスティアン・マッキ(Sebastián Macchi)も参加し、ハイレベルかつ、この地の音楽に特有の清々しく澄んだ空気を感じさせてくれる素晴らしいアルバムだ。
レイト・トランスミッションズ・スターリング・イヴ・クォーターメイン(Late Transmissions starring Eve Quartermain)のデビュー・アルバム『The Heart Wants What It Wants』のクオリティの高さと、強烈な物語性に驚かされた。グループの中心人物は、リヴァプールの音楽シーンで長いキャリアを持つデヴィッド・バルフ(David Balfe)とデヴィッド・ヒューズ(David Hughes)。そこに圧倒的な歌唱力を持つ無名のヴォーカリストのイヴ・クォーターメイン(Eve Quartermain)が加わり、映画音楽、60年代オーケストラル・ポップ、ジャズ、トリップホップなどを融合した独特の世界を作り上げている。
ポルトガルのシンガーソングライター、マヌエル・リニャレス(Manuel Linhares)の2026年新作『Atlântico』がリリースされた。プロデュースは前作『Suspenso』に引き続き、現代ブラジル音楽の最重要人物のひとりであるアントニオ・ロウレイロ(António Loureiro)が務め、演奏にはロウレイロ(ds, synth, key)のほかニューヨークのジャズの第一線で活躍するグレン・ザレスキ(Glenn Zaleski, p)やオル・バレケット(Or Bareket, b)、小川慶太(Keita Ogawa, ds, perc)ら国際色豊かなメンバーが参加。録音はニューヨークとポルトガル・ポルトで行われ、名実ともに越境的な作品となっている。
オーストラリア出身、現在はイングランド・マンチェスターを拠点に活動するシンガーソングライター、ニシュラ・スミス(Nishla Smith)の第2作目となるアルバム『it's getting late you'd better go home』(2026年)が、非常に良い。親しみやすいメロディーライン、素直だが時に感情豊かなヴォーカルが、彼女の音楽の重要なパートナーであるトム・ハリス(Tom Harris)のピアノを中心としたジャジーで洗練されたアレンジと伴奏(と、それだけに留まらない音響処理)に映える。彼女の音楽にはエルトン・ジョンやバート・バカラックといった“古き良き”ポップスへの愛、ゴスペルやブルースからの微かな影響も伺え、さらにはポスト・ボサノヴァの潮流に乗せた感じの曲もあり、とても楽しく聴けるアルバムに仕上がっている。
英国ロンドンを拠点とするピアニスト/作曲家ラフィ・ブッシュマン(Raffy Bushman)が、自身初となるフルレンス・アルバム『New Life』をリリースした。これまでピアニストとして、そして時にはチェリストとしても様々な編成で革新的な表現を試み、充実したUKジャズシーンの中でも独自の立ち位置を築いてきた彼が、今作ではシンプルなピアノトリオ編成に立ち返りつつも、スウィング・ジャズからヒップホップまであらゆる時代からの影響を感じさせる独創的な音楽を創り上げている。
ジャズを基盤に、自身のルーツであるアラブ音楽とエレクトロニカを融合させたシネマティックな音風景が素晴らしい。フランスのトロンボーン奏者/作曲家ロビンソン・クーリー(Robinson Khoury)の新作『Transara』は、前作『MŸA』(2024年)での確かな手応えをより深掘りし発展させたものだ。メンバーも前作に参加していたアニッサ・ネアリ(Anissa Nehari)のパーカッション/ヴォイスと、レオ・ジャセフ(Léo Jassef)のキーボード/シンセ/ヴォイスとのトリオ編成から変更なく、“MŸA”トリオの成熟を思わせる。
コーカサス地方とバルカン半島の旋律が混ざり合い、高度な即興で絡み合う素晴らしいデュオ・アルバムだ。ジョージア出身のピアニスト、ジョルジ・ミカゼ(Giorgi Mikadze)と、北マケドニア共和国出身のクラリネット奏者イスマイル・ルマノフスキー(Ismail Lumanovski)の2026年作『Il Duo』は、全9曲・約34分というコンパクトな作品ながら、コーカサスからバルカン、アナトリア、東地中海へと広がる広大な音楽文化圏の記憶が凝縮されている。
アルゼンチン第3の都市、ロサリオを拠点とするインストゥルメンタル・ジャズファンクバンド、ラテロニアス(Latelonius)の2026年新譜『Lonius』が最高だ。パーカッション奏者2人を含むソリッドなリズム隊と強力な管楽器セクション、変幻自在のギターにキーボード、さらにはターンテーブル奏者も備えた12人の大編成(バンドメンバーは8人だが、準メンバー的に4人が加えられている)で繰り出される完膚なきグルーヴが脳天を貫き、神経を電流で刺激する。
コンゴ民主共和国の首都キンシャサ出身、現在はカナダ・トロントを拠点とするシンガーソングライター/ギタリスト、ジョナサン・ンヴィタ(Jonathan Nvita)のデビューアルバム『Mosisa』は、コンゴの伝統的なリズムにリンガラ語の歌詞といった活気に満ちたアフリカのルーツと、彼がトロントで培った洗練されたジャズの影響が融合した稀有な作品だ。アルバムの核となるのはアフリカの精神性、共同体の記憶、家族への敬意などであり、近年のアフリカン・ジャズ/ワールド・ジャズの中でも非常にアイデンティティ意識の強い作品といえる。
イタリアのベーシスト/作曲家ローザ・ブルネッロ(Rosa Brunello)の2026年新譜『We Are Surging Waters』は、“私たちは押し寄せる水”を意味するタイトルが示すとおり、とてつもなく力強いジャズの傑作だ。トランペットのヤズ・アハメド(Yazz Ahmed)、バリトンサックスのテイマー・オズボーン(Tamar Osborn)、そしてトロンボーンのルカ・タピーノ(Luca Tapino)の強力な3管をフロントに据え、ただでさえ強いグルーヴに半数の曲ではツインドラムという編成で、強固な絆で結ばれた即興集団の本質的な強さを見せつける。
トルコ出身の歌手エリフ・サンチェス(Elif Sanchez)の2026年作『Así pues…』は、はっきり“金字塔”だと断言したい。アルバム冒頭に収められた(1)「Choro Pro Zé」は、そう確信させてくれる最高の幕開けだ。ソリストとしてフィーチュアされるのはマケドニア出身のクラリネット奏者イスマイル・ルマノフスキー(Ismail Lumanovski)。そしてポーランドの弦楽四重奏団オ・クワルテト(O Kwarteto)の情緒豊かな伴奏を得て、エリフ・サンチェスは個性的で美しい揺らぎのヴォーカルで“世界観”を作り上げる。
イスラエルを代表するシンガーソングライターであり、ピアニストのヨニ・レヒテル(Yoni Rechter)が、同国の若手ジャズミュージシャンを迎えて約35年ぶりとなる本格的なジャズ・アルバム『סגור פתוח סגור』(Closed Open Closed)をリリースした。これまで歌モノが中心に、ポップス、ロック、映画音楽など幅広く才能を発揮してきた彼だが、今作はほぼ全編がインストで、ベースにバラク・モリ(Barak Mori)、ドラムスにロニ・カスピ(Roni Kaspi)を迎えてのコアトリオを中心に、ゲストでギタリストのニツァン・バール(Nitzan Bar)やサックス奏者のエリ・デジブリ(Eli Degibri)らをフィーチュア。モダンジャズの礎を基調に、彼独自のソングライターとしての豊かな感性で綴られた詩的な音楽を繰り広げている。
インド系スウェーデン人アーティスト、イシャーク(Ishaaq)ことイサク・クラッソン(Isak Klasson)率いるイシャーク・アーキストラ(Ishaaq Aarkistra)。2026年作『Arikomban Space』は、インドのラーガをベースに西洋音楽の馴染みやすさで繕った、サイケデリックでスピリチュアルな怪作だ。ドラムス、タブラ、ペダルスティールギター、バンスリ、シンセ、そしてヴォーカルという奇特な編成で、即興も重視された60〜70年代風のレトロなバンドサウンドも魅力的だ。