ノア・ドレズナー。気鋭女性フラメンコギタリストの果てなき挑戦

Noa Drezner - El Hilo Rojo

世界でも珍しい女性フラメンコギタリスト

フラメンコというスペインの伝統的な文化がある。

日本で“フラメンコ”と聞くと、豪華かつエキゾチックなドレスに身を包んだ女性ダンサーのイメージが強いかもしれない。

しかし、そんなフラメンコでダンサー並に重要なものが「ギター」だ。

フラメンコで用いるギターは一見クラシックギターのように見えるが、クラシックギターと同じくナイロン弦を貼っていながら、実は激しく弦を搔き鳴らしたりボディを叩く奏法を多様するフラメンコに特化した別物の楽器である。

長らく、このフラメンコギターは男性が弾くものという“伝統”に捉われてきた。
…そう、女性の奏者というものがほとんど現れなかった世界だった。

そんなフラメンコギター界に一石を投じたのが、この“女性フラメンコギタリスト”ノア・ドレズナー(Noa Drezner、1983年生まれ)だ。

イスラエル出身の彼女は現在ではもっとも期待されている女性フラメンコギタリストだが、その経歴も実に興味深く、20歳の頃にはインドで手作りのジュエリーの製作をしていたようだ。

その後スペインに渡り、どういうわけか「私はフラメンコを演奏するために生まれてきた」と気づき、フラメンコギタリストとしての活動を始めた。

彼女が活動を始めたスペインの街ヘレス(Jerez)では、フラメンコは町中に溢れていたのに女性ギタリストはたった一人もいなかった。

当初は女性であることを理由に好奇の目で見られたが、ステージでの演奏を重ねるうちにその実力が認められるようになり、注目されるようになっていったそうだ。

本作『El Hilo Rojo』(赤い糸、の意)はそんなノア・ドレズナーのデビュー作。
収録された全8曲は、“正統なフラメンコ”への彼女のリスペクトが感じられるが、もしかしたら男性優位の業界へのほんの少しの反骨心がスパイスになっているかもしれない良作だ。

フラメンコギターの“伝統”に一石を投じた作品として、要注目のアルバムと思う。

ノア・ドレズナー。
世界でも珍しい女性フラメンコギタリストとして、今後どんな進化を遂げていくのか、とても楽しみだ。

デビューシングル「El último momento」のMV。
何度か映る女性ベーシスト、ガル・マエストロ(Gal Maestro)は、現代JAZZでもっとも重要なピアニストのひとり、シャイ・マエストロ(Shai Maestro)の妹でもある。
Noa Drezner - El Hilo Rojo
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