エレクトロ・ルンバイアォンの衝撃
先日、バルセロナ・ミクスチャーを代表するバンドOjos de Brujo(オホス・デ・ブルッホ)の解散後の元メンバーの活動について調べていて知ったElectro Rumbaiaoのアルバム『Boom』が衝撃的すぎたので少し深掘りして紹介したい。
Electro Rumbaiaoはその名の通り、エレクトロニカとフラメンコ(ジプシー・ルンバ)、そしてブラジル北東部の伝統的なダンス音楽であるバイアォンの融合を謀る音楽プロジェクトだ。首謀者は元オホス・デ・ブルッホのDJパンコ(DJ Panko)。オホス・デ・ブルッホで新たなワールドミュージックの形を提示してみせた彼が次に考えたのは、ブラジルの多彩なリズムと、ジプシーたちの魔法のようなバルカン音楽と、スペインが誇るフラメンコ音楽をエレクトロニカやVJと融合させることだった。
DJパンコはオホス・デ・ブルッホの後継バンド、レナカイ(LENACAY)のメンバーでもあったブラジル・バイーア州出身の打楽器奏者アラン・ソウザ(Alan Sousa)と共にElectro Rumbaiaoを結成。バイアォンにもバルカン音楽にも精通するアコーディオン奏者のアナトール・エレムシウク(Anatol Eremciuc)をサウンドの中心に据え、さらにラッパー、VJ、フラメンコダンサーなどが参加したバンド「Electro Rumbaiao」を率い、2015年にファーストアルバム『Boom』を発表した。
(1)「Boom」を聴けば、この斬新なアイディアは大成功だったと確信できる。アラン・ソウザのパーカッション、Kumar Subleao Beatのラップ/ヴォーカル、紅一点IZÄによるダンス/ヴォイス。一寸間違えれば混ぜるなキケンみたいな音の混合なのに、カオスの一歩手前で正気を保つ絶妙なバランス感覚が恐ろしいくらいである。
(2)「Ijexa」は“マンギビート”を提唱したブラジルの伝説的グループ、シコ・サイエンス&ナサォン・ズンビ(Chico Science & Nação Zumbi)を彷彿とさせる。マンギビートを継承するようなビートに絡むアナトール・エレムシウクのアコーディオンには妙な中毒性がある。
(5)「Ay Qué Pena」はサンブラと呼ばれるスタイルのフラメンコギターに、カンテ(歌)、ブラジリアンパーカッションやアコーディオンが絡みつく妖しさがクセになる。
エレクトロニカ、ルンバフラメンカ、ブラジル音楽にとどまらず、Hip-Hopやファンク、ジャズ、アフリカ音楽、ラテン音楽、アラブ音楽などからの影響も伺えるElectro Rumbaiao。これこそ、バルセロナ・ミクスチャーの真髄だろう。