UKの才女シャーリー・スマート、チェロで紡ぐ欧州ジャズ×中東音楽

Shirley Smart - Long Story Short

英国生まれ、イスラエルで学んだジャズチェロ奏者

猫とハリネズミと赤ワインが好き。
ロンドンのジャズ/ワールドミュージックシーンで最も優れたチェリスト/作曲家として知られるシャーリー・スマート(Shirley Smart)は、ロンドン交響楽団やヨーヨー・マ(Yo-Yo Ma)とも共演したロンドンを離れ、イスラエルのエルサレムで10年間中東音楽を学びながらアヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)やオメル・アヴィタル(Omer Avital)らと共演もするなど、異常に多彩な経歴を持つ女性音楽家だ。

ヨーロッパ諸国、ロシア、ヨルダン、エジプト、モロッコなど多くの国でのツアーも行い、イスラエルやパレスチナ全土を回った公演では紛争に巻き込まれたこともあるらしい。

1999年にロンドンに戻ってからは多様な音楽的バックグラウンドを持つ強みでジャズ/ワールドミュージックシーンをその豪快なチェロによる即興演奏で牽引し、これまでにイタリアのギター奏者アントニオ・フォルチオーネ(Antonio Forcione)、エチオ・ジャズの至宝ムラトゥ・アスタトゥケ(Mulato Astatke)、イギリスの小説家/サックス奏者ジラ・アツモン(Gilad Atzmon)、UKで注目されるピアニスト、ニール・カウリー(Neil Cowley)、歌手/ヴァイオリン奏者アリス・ザワツキー(Alice Zawadski)といった個性的な面々と共演を行ってきた。

“Melange Collective” と題されたプロジェクトでは、モロッコやバーレーン、スペイン、アイルランド、UKの優れた音楽家たちと異文化コラボレーション。

ヨーロッパ〜中東の音楽の宝石箱

そんなシャーリー・スマートが2018年に発表したのが『Long Story Short』と題されたアルバム。彼女の卓越した技術と音楽性で、西洋音楽、中東音楽、ジプシー音楽、バルカン音楽などの個性的なクロスオーバー・ジャズを楽しむことができる好盤だ。

アルバムは力強くチェロが踊る優雅なワルツ(1)「Waltz for an Amethyst」で幕を開けたかと思えば、ヴィブラフォン奏者オーフィ・ロビンソン(Orphy Robinson)がゲスト参加した(2)「Halfouine」ではいきなりアラビックな展開が飛び出す。スペイン出身のトリオのドラマー、デミ・ガルシア・サバ(Demi Garcia Sabat)は曲によってドラムや各種パーカッションを使い分け、アルバムのリズムに多彩な変化を与える。

(3)「Longa Kismet」にはジェフ・ベック・バンドのセカンドギタリストとして知られるスイス人ギタリスト、ニコラス・メイヤー(Nicolas Meier)が参加。

その後も多様な音楽が続き、耳を楽しませてくれる。

母国語の英語のほか、ヘブライ語とアラビア語を話し、現在はフランス語の習得に取り組んでいるという彼女の強い好奇心が生んだ、傑作アルバムだ。

シャーリー・スマート・トリオのライヴ演奏(ダイジェスト盤)

Shirley Smart Trio :
Shirley Smart – cello
John Crawford – piano
Demi Garcia Sabat – drums/percussion

Guests :
Nikki Iles – accordion (9,13)
Nicolas Meier – guitar (3,6,8,10,12)
Orphy Robinson – vibraphone ( 2,11)

Shirley Smart - Long Story Short
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