ラテンジャズをあらゆる方向に拡張するロベルト・フォンセカ新譜『Yesun』

Roberto Fonseca - Yesun

バリエーション豊かなロベルト・フォンセカ新譜『Yesun』

あらゆる音楽を吸収し、ラテン音楽を前進させるアフロ・キューバン・ジャズを代表するピアニスト、ロベルト・フォンセカ(Roberto Fonseca)の通算9枚目となる2019年作『Yesun』はとてもラテンジャズを基調としつつ、他ジャンルを積極的に取り入れてきた彼らしいバリエーション豊かな快作。

編成としてはピアノトリオが軸だが、本作はピアノトリオとは思えない多彩な音が詰まっている。ロベルト・フォンセカ自身が弾く楽器もピアノを中心に楽曲によってクラヴィネットやシンセサイザー、オルガンなども使い分け、多彩な音色でジャズ、アフロビート、ファンク、ヒップホップなど様々なアプローチを仕掛ける。

ゲストも魅力的だ。
(2)「Kachucha」にはレバノン系フランス人のイブラヒム・マーロフ(Ibrahim Maalouf)が参加し、間奏部では得意の微分音トランペットを聴かせる。ロベルト・フォンセカとイブラヒム・マーロフの共演はイブラヒムの新譜『S3NS』でも聴くことができるが、ラテンジャズとアラビアンジャズの融合というのも面白い。

イブラヒム・マーロフ参加の(2)「Kachucha」。
キューバ音楽のリズムの上で繰り出されるアラビック・トランペットが面白い。

キューバのR&B、ヒップホップ系女性シンガー、ダナイ・スアレス(Danay Suárez)が参加した(3)「Cadenas」はクラヴィネットの音色やダナイ・スアレスの力強いラップが印象的だ。

クラヴィネットの音色が印象的、ファンキーな(3)「Cadenas」。
キューバのシンガー、ダナイ・スアレス(Danay Suárez)参加。

アナログシンセの音色が効果的なその名も(6)「Motown」。
アメリカ合衆国出身の重鎮サックス奏者、ジョー・ロヴァーノ(Joe Lovano)をフィーチュアした(8)「Vivo」も印象的な楽曲だ。

1994年に結成されたキューバを代表する女性ヴォーカルグループ、ヘマ・クアトロ(Gema 4)も(1)「La Llamada」、(10)「Mambo Pa la Niña」の2曲に参加している。

ラテン〜ジャズシーンに止まらない活躍をみせるロベルト・フォンセカ

ロベルト・フォンセカ(Roberto Fonseca)はキューバの首都ハバナに1975年に生まれたピアニスト/作曲家。ドラマーの父ロベルト・フォンセカ・シニア(Roberto Fonseca, Sr)、プロ歌手の母メルセデス・コルテス・アルファーロ(Mercedes Cortes Alfaro)という音楽に恵まれた環境のもと、4歳で打楽器、8歳でピアノを始め、14歳の頃からキューバの至宝ピアニスト、チューチョ・バルデス(Chucho Valdés)に師事。この頃からキューバの伝統音楽とアメリカのジャズの融合を試みていたという。

1999年には最初のアルバム『En el Comienzo』がキューバ国内でジャズのベストアルバムに選出。2000年、2001年にはブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(Buena Vista Social Club)のレコーディングやツアーにも帯同し、世界的に知られるようになっていった。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでも知られるキューバの高齢女性歌手、オマーラ・ポルトゥオンド(Omara Portuondo)との活動でも知られ、彼女と共に来日公演も行っている。

(5)「Aggua」のMV。
魔術的リアリズムな映像表現も魅力的。

Roberto Fonseca – piano, keyboards
Raúl Herrera – drums, percussion
Yandy Martínez Rodriguez – bass

Ibrahim Maalouf – trumpet (2)
Joe Lovano – tenor saxophone (8)
Gema 4 – vocals (1, 10)
Danay Súarez – vocals (3)

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