天上から聴こえてくるかのような安息の音楽
まるで天国から漏れて聴こえてくるかのような神秘的で美しい響き…。中世にタイムスリップしたかのような感覚に陥る。
これまでも何枚かの作品をジャズの名門ECMレコードからECM New Siriesとして発売しているグレゴリオ聖歌のグループ、ヴォックス・クラマンティス(Vox Clamantis)の新譜『Cyrillus Kreek: The Suspended Harp of Babel』はエストニアの作曲家、キリルス・クレークの作品集だ。
エストニアの作曲家/編曲家、キリルス・クレーク(Cyrillus Kreek, 1889年 – 1962年)はエストニアに伝わる民謡を編曲したり、旧約聖書の詩篇に曲をつけるなどし多くの合唱曲を残してきた。
このアルバムではそれらの楽曲がこの上なく美しい男女混声のグレゴリアン・チャント(グレゴリオ聖歌)で荘厳に歌われ、ときに北欧の伝統楽器カンネルやニッケルハルパで奏でられる。ゆったりとした静謐で心やすらぐ時間が流れる、素晴らしい音楽だ。
ヴォックス・クラマンティス(Vox Clamantis)は1996年設立の混声合唱団。グレゴリオ聖歌、中世音楽や現代音楽を得意とする。コンダクターは他にも合唱団や管弦楽団を指揮するヤーン=エイク・トゥルヴェ(Jaan-Eik Tulve)で、彼はその貢献が認められ2017年にエストニアのミュージシャン・オブ・ジ・イヤーにも選出されている。
本作の録音はエストニアの首都タリンの教会で2018年に収録された。教会特有の豊かな残響も耳に心地いい。